『分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議』
河合香織, 2021, 岩波書店
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分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議
クラスター対策に3密回避。未知の新型コロナウイルスに日本では独自の対策がとられたが、その指針を描いた「専門家会議」ではどんな議論がなされていたのか? 注目を集めた度々の記者会見、自粛要請に高まる批判、そして初めての緊急事態宣言……。組織廃止までの約四カ月半、専門家たちの議論と葛藤を、政権や行政も含め関係者の証言で描くノンフィクション。
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議|厚生労働省
尾身茂
「ルビコン川を渡る」=後戻りのきかない道へと歩み出す、その決断を下すことを意味する。
クラスター対策
西浦博, 押谷仁,
WHO, CDC
「自分たちが前に出て、予想以上に目立ってしまった。そのことで、政治家が専門家を出し抜くようなイニシアチブを取ろうとする引き金になり、一斉休校につながってしまったのだとしたら、これからの政治と科学の関係は非常に難しくなる」 尾身も休校措置を報道で知ることになった。 「政治家は自分たちでリーダーシップを発揮したいという思いが当然あるに違いない。そもそも政府と専門家の意見が違うことがあっても当然だ。政治家に求められるのは、専門家の意見を聞いたうえで、最終的に国の責任で判断してくれることである。ただ、今回課題として残ったのは、ある場合には専門家に意見を聞いて、ある時は聞かないで決めてしまうという、一貫性の欠如だ」 尾身の懸念は、その後の政府による全世帯に対する布マスク配布、さらには観光や外食などの需要を喚起して経済活性化を図るGoToキャンペーンにまで尾を引くことになる。
休校依頼、布マスク配布、GoToキャンペーンは、政治家と専門家の相談の上決まったものではない。
医学、サイエンス、公衆衛生のマネジメント、専門家の知見を情報としてインプットして、政治家が決断する。
リスク評価、フィードバックループ、責任の所在。
「感染症対策で専門家の役割は重要だけれど、これは全体の一部でしかない。国があり、自治体があり、ジャーナリズムがあり、そして一般の市民が主役なんです。たかが十数人の専門家が何か言ったからといってすべてができるわけでもない。人が動いてくれないとどうにもならない」
OneTeam
無謬性の原則
政府は間違うことがない、という前提。
その前提がおかしい。分からないことだらけだが、分からない状態で決断する必要がある、だからこそ説明をするべき。
「マスになれば多様な意見が出ます。同じ考え方をとりながらも、心配しすぎる人には『大丈夫ですよ』と言い、軽く見積もる人には『注意しなければだめですよ』と伝えなければいけない。でも最後は一緒にやったという思いが重要になる」