Xenosekai 一周年記念 解説
https://youtu.be/TiyV9f9-gE8?si=8RMj_4lbcef2KFOx
投稿日:2023.09.06
BPM:175 / 87.5
Scale:Ab Major / G Locrian
本日、私の代表作であるXenosekaiが投稿から一周年を迎えました
実に喜ばしいことですね
ということで軽く解説のようなものをしていこうと思います
そもそも、この曲は「何か可愛い曲を作りたい」というところから出発しています
可愛い曲と言ったらkawaii future bassが真っ先に思い浮かびますよね
この曲にもその要素が多分に含まれています(過言)
とりあえずその最たるものは、曲を通して鳴っているシンセベルでしょう
これのせいで異世界感が出ていると大変に好評です
知人によると、可愛くなるはずの音が逆に不気味さを出していて、それが違和感の正体なのだとか
心外でなりませんね
次にドラムです
こちら、future bassでありがちなものとDnBでありがちなものを組み合わせています
これは文句なしで可愛いですよね
そして、future bassの特徴であるハーフテンポもしっかり取り入れています
本物はサビ全体がハーフテンポになるのですが、DnB感も出したかったのでサビを3分割しています
最初はDnB感強め、途中でBPMを半分にしてfuture bass感を出し、最後にその流れでBPMを戻してどちらともとれるような曲調にしています
その後のドラムソロはEDMで言うところのビルドアップのような感じにしつつ盛り下げるような構成で、一瞬の3拍子を経てEDMで言うところのドロップに入ります
つまり構成がかなり異質なんですよね
イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ1/3→サビ2/3(ハーフテンポ)→サビ3/3→ビルドダウン(?)→一瞬の間奏(3拍子)→ドロップ→ドロップ+ビルドアップ→一瞬の間奏(5拍子)→サビ1/3→間奏(11拍子、BPMは175から87.5まで下がり続ける)→サビ2/3(ハーフテンポ)→サビ3/3→ビルドダウン→ビルドダウン+アウトロ→アウトロ
という感じです
1年前の私は何を思ってこれを作ったのでしょうね
余談中の余談
「ビルドダウン」とは 「新型核兵器を一つ配備すると旧型核兵器を二つ削減する方式。1982年に始まった米ソ戦略核兵器削減交渉(START)での米側の提案の一つ」(出典:コトバンク)だそうです
さて、次は音楽理論的なところからいきましょう
ドロップで突如割り込んできて、後半頻繁に登場するのがLocrianスケールです
所謂Cメジャースケールと同様に、白鍵のみで定義されているものから派生している教会旋法の一つでありながら、主音と第5音が減5度の関係になっているため「理論上存在する」と言われるほど使われていないんです
そして、早速話題がずれますが、サビ2/3と3/3、そして11拍子の間奏は少し和風寄りにしているんですよ
特にハーフテンポのドラムと笛のように若干上擦ったようなシンセで顕著ですね
私の中では、日本の祭りは逆に異世界感があるとかいう謎のイメージがあるんです
だって考えてみてくださいよ、暗い中に橙色の光があって笛と太鼓の音が聞こえてくるんですよ?
そういう非日常感が好きなので取り入れているわけです
で、これが何なのかと言いますと、岩戸調子と呼ばれる日本の音階はLocrianスケールと非常によく似ているペンタトニックスケールなんです
しかも問題の減5度が生じる第5音もしっかり残っています
岩戸調子 : I, bII, IV, bV, bVII
Locrian : I, bII, bIII, IV, bV, bVI, bVII
https://youtu.be/Rir-xyhYDbQ?si=5U3tLGytpRwV3uET&t=4
↑この動画がわかりやすいですかね
めっちゃ和風ですが、Locrianから2音抜いただけなんです
この曲で岩戸調子を用いているわけではありませんが、Locrianスケールというのはそもそも和風な響きを含んでいるわけです
前々からLocrianスケールに興味はあったのですが、先人同様あまり上手な使い方を見いだせなかったので使わなかったんです
しかし、スケールの持つ違和感と若干和風な響きが上述した日本の祭り、延いてはこの曲にピッタリだと思ったので取り入れてみたんです
そしたら見事にはまってしまいまして(2つの意味で)、その後は殆どの曲に取り入れています
ちなみにAb MajorとG Locrianは構成音が同じですが、並べ方が違います
https://gyazo.com/70fce05ffb731f58302d169d4bc94fb9
↑今では動画のコメントでこんなことを言われるほどです(外国人ニキ感謝!) 日本の伝統的な曲とも、近未来的なDnBやtrip hopなんかとも合ってしまうLocrianスケール、凄いですよね
皆様も是非Locrian教へ入信してみましょう
ではここからはモチーフと途中の英単語についてです
前述したように「可愛さ」「異世界」「違和感」が主なコンセプトですが、これを含む百元零次奇想曲全体で見ると、「変数」「未知数」というのもモチーフと言えるでしょう ということで"X"です
どこぞのイーロンと同じですね、最悪です
出てくる英単語を列挙すると、
Xenophobia 外国人恐怖症
Xenophilia (上の逆)
Xenotransplant 異種移植
Xenograft 〃
Xenogamy 異株受粉
Xenolith 捕獲岩
Xenotropism 異種指向性
Xenobiology 地球外生物学
Xenon キセノン (ギリシャ語のξένος(xenos)「奇妙な」から)
Xenoglossia 異種言語発話現象
となります
補足
「異種受粉」は自家受粉の逆です
「捕獲岩」は火成岩に含まれる異種の岩石片のことです
花崗岩の中に斑糲岩が入っていたりとかするようです
「異種言語発話現象」は習っていない言語を使える現象のことです
おまけ
あちらはエドワード・エルガーのエニグマ変奏曲のオマージュです
Self-Coverに内包されているバージョンはこれの笛っぽいシンセがリコーダーに置き換わっているという小ネタ付きです
ということでXenoちゃん1歳おめでとう!
https://gyazo.com/28638422c97b80b05d8e53523478b8b7
P.S.
この曲のどこが可愛いのかわからなかった人たちへ
私はパッケージ化されたわざとらしい「可愛い」よりも、全体にそれとなく散らばっているような断片的な「可愛い」に惹かれるんです
もずより