非線形最適化問題としての容器設計
下図のように,板から蓋のない直方体の容器を作る。ただし,当然のことながら$ x>0, y>0, z >0で,板の厚みは無視する。容器の容積は1,つまり,$ xyz=1とするように作る。
https://gyazo.com/b6ad9183c0ca46cd18ba3b19e6e9ecd0
図で「捨てる部分」とある所は無視して,「使う部分」の板の面積を最小にすることを考える。図の「使う部分」の面積$ A(x,y,z)は,次のようになる。
$ A(x,y,z) = xy+2yz+2zx
この問題のミソは,蓋がない点にある。蓋があれば,立方体($ x=y=z=1)とするのが最もよいことは明らかである。蓋がなければ,その分平べったくなる($ x>1, y> 1, z<1)ことが予想されるが,どの程度高さを低くすれば良いかは分からない。なお,対称性から,底面を正方形($ x=y)にすべきことは分かるが,定式化ではそのことは使わないものとする。
$ A(x,y,z)\longrightarrow \min
subject to $ xyz=1
$ L(x,y,z,\lambda) = A(x,y,z)+\lambda(xyz-1) = xy+2yz+2zx+\lambda(xyz-1) \longrightarrow \min
$ Lが最小となる条件は,次の通り(数学的には必要条件に過ぎないが,工学的には必要十分条件であることが明らか)。 $ \frac{\partial L}{\partial x} = \frac{\partial L}{\partial y} =\frac{\partial L}{\partial z} = \frac{\partial L}{\partial \lambda} =0
それぞれ計算すると次のようになる。
$ \frac{\partial L}{\partial x} = y+2z+\lambda yz =0 ①
$ \frac{\partial L}{\partial y} = x + 2z + \lambda zx =0 ②
$ \frac{\partial L}{\partial z} = 2(x+y) + \lambda xy =0 ③
$ \frac{\partial L}{\partial \lambda} = xyz -1 =0 ④ (元の制約式と同じ)
①ー②
$ y-x+\lambda (y-x) z=0 $ (y-x)(1+\lambda z)=0
$ \therefore x=y or $ z=-\frac{1}{\lambda}
後者を①に代入すると,$ y+2z+\lambda y \frac{-1}{\lambda} = 2z = 0 で,$ z>0の条件を満たさないので,$ x=yとなり,よって底面は正方形とすべきことが示された。
$ x=yならば①は②と等しくなる。また,③は次のようになる。
$ 4x+\lambda x^{2}=0, $ x>0より$ \lambda = -\frac{4}{x}
これを②に代入すると,次式が得られる。
$ x+2z - \frac{4}{x}zx = x+2z-4z=0 $ \therefore z=\frac{x}{2}
したがって,④で次の解が得られる。
$ x\cdot x \cdot \frac{x}{2}-1=0 $ x^{3}=2
$ x=y=^{3}\sqrt{2}\approx 1.26, $ z=\frac{^{3}\sqrt{2}}{2}\approx 0.63
2019/7/14
(以下 2022/01/30 後日追記)
面積$ A(x,y,z)はいくつかバリエーションが考えられる。ついでなので考えてみよう。今度は,捨てる部分の面積も含めて最小化する。
$ A_{2}(x,y,z)=(x+2z)(y+2z)\longrightarrow \min
subject to $ xyz=1
ラグランジュの未定乗数法を適用。
$ L_{2}(x,y,z,\lambda) = A_{2}(x,y,z)+\lambda(xyz-1) = xy+2yz+2zx+4z^{2}+\lambda(xyz-1) \longrightarrow \min
最適条件をそれぞれ計算すると次のようになる。
$ \frac{\partial L}{\partial x} = y+2z+\lambda yz =0 ⑤
$ \frac{\partial L}{\partial y} = x + 2z + \lambda zx =0 ⑥
$ \frac{\partial L}{\partial z} = 2(x+y) + 8z + \lambda xy =0 ⑦
$ \frac{\partial L}{\partial \lambda} = xyz -1 =0⑧ (元の制約式と同じ)
⑤ー⑥
$ y-x+\lambda (y-x) z=0 $ (y-x)(1+\lambda z)=0
$ \therefore x=y or $ z=-\frac{1}{\lambda}
後者を⑤に代入すると,$ y+2z+\lambda y \frac{-1}{\lambda} = 2z = 0 で,$ z>0の条件を満たさないので,$ x=yとなり,よって底面は正方形とすべきことが示された。
$ x=yならば⑤は⑥と等しくなる。また,⑦は次のようになる。
$ 4x+8z+\lambda x^{2}=0, $ \therefore \lambda = -\frac{4}{x}-\frac{8z}{x^{2}}
⑧より$ x^{2}z=1なので,$ \lambda = -\frac{4}{x}-\frac{8}{x^{4}}
これを⑥に代入すると,次式が得られる。
$ x+2z - (\frac{4}{x}+\frac{8}{x^{4}}) zx = x + \frac{2}{x^{2}}-\frac{4}{x^{2}}-\frac{8}{x^{5}} = x - \frac{2}{x^{2}}-\frac{8}{x^{5}}=0
$ x^{6}-2x^{3}-8=(x^{3}+2)(x^{3}-4) = 0
$ x>0なので,$ x=^{3}\sqrt{4}
したがって,次の解が得られる。
$ x=y=^{3}\sqrt{4}\approx 1.59, $ z=\frac{^{3}\sqrt{4}}{4}\approx 0.40となり,捨てる面積をも小さくする作用が働き,より平べったい形となる。