複素数の性質の初歩
二つの複素数がある。$ z_{1}=r_{1}e^{\theta_{1}i}, \quad z_{2}=r_{2}e^{\theta_{2}i} https://gyazo.com/12032e40f7105844d371226ea0f8e2c3
この複素数の偏角の差$ \arg (z_{1}) - \arg (z_{2})=\theta_{1}-\theta_{2}を計算するには2つの方法がある。 $ \arg (z_{1}) - \arg (z_{2}) = \arg \left( \frac{z_{1}}{z_{2}} \right) = \arg (z_{1} \bar{z_{2}})
個別に説明する。
除法を使う
$ \arg \left( \frac{z_{1}}{z_{2}} \right) = \arg\left(\frac{r_{1}e^{\theta_{1}i}}{r_{2}e^{\theta_{2}i}}\right)= \arg\left(\frac{r_{1}}{r_{2}} e^{(\theta_{1}-\theta_{2})i}\right)=\theta_{1}-\theta_{2}
電気回路でいえばインピーダンスの計算に基づく。$ \theta_{2}-\theta_{1}を計算したければ,分母分子を反対にすれば良い。 複素共役の積を使う
$ \arg (z_{1} \bar{z_{2}}) = \arg \left( r_{1}e^{\theta_{1}i} \cdot r_{2}e^{-\theta_{2}i} \right)= \arg\left(r_{1}r_{2} e^{(\theta_{1}-\theta_{2})i}\right)=\theta_{1}-\theta_{2}
電気回路でいえば電力の計算に基づく。$ \theta_{2}-\theta_{1}を計算したければ,前の複素数($ z_{1})の方の共役を取れば良い。なお,複素共役を取り忘れると,$ \theta_{1}+\theta_{2}が計算されてしまう。 これらはもちろん,複素数が極座標ではなく実部+虚部の形になっている時も同様である。除法は偏角の差を取り,乗法は偏角の和を取る。乗法で偏角の差を取りたい場合,複素共役を取って偏角の符号をひっくり返して和を取るということをしているのである。 また,$ |z_{1}z_{2}|=|z_{1}\bar{z_{2}}|であり,大きさ(電気回路でいえば皮相電力)だけ求めるのであれば複素共役を取る必要はない(計算が楽になるかは別だが)。 2019/6/29