フーリエ級数が似ていても形が全く異なる波形
$ y = \frac{4}{\pi} \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{2n-1} \sin\{(2n-1)x\}= \frac{4}{\pi} \left\{ \sin(x) + \frac{1}{3} \sin(3x) + \frac{1}{5} \sin(5x) + \frac{1}{7} \sin(7x) \cdots \right\}
これをグラフに描くと,次の通り。振幅1,周期$ 2\piの方形波である。なお,このグラフは5万項まで取ってあるが,リプルはなく,ほぼ完璧な方形波に見える。 https://gyazo.com/99af19d9b529e6257be7b884a088cc05
では,元のフーリエ級数の符号を1項おきに反転してみる。
$ y = \frac{4}{\pi} \sum_{n=1}^{\infty} \frac{(-1)^{n-1}}{2n-1} \sin\{(2n-1)x\}= \frac{4}{\pi} \left\{ \sin(x) - \frac{1}{3} \sin(3x) + \frac{1}{5} \sin(5x) - \frac{1}{7} \sin(7x) \cdots \right\}
これを上と同じように5万項まで取ってグラフにしてみると次の通り。
https://gyazo.com/51af4b4e4258e0bdefe54fe429d31b5f
この関数のフーリエ級数展開する前はどのような関数であろうか? $ x=\pm \frac{\pi}{2}でパルス状になっており,そこから類推するに,正と負のインパルスが1周期内に1つずつ存在する波形と思われる。単位インパルス(デルタ)関数を$ \delta(x)とすると,$ y=2 \left\{ \delta\left(x-\frac{\pi}{2}\right) - \delta\left(x+\frac{\pi}{2}\right) \right\}とすれば,フーリエ級数展開すれば確かに上の式になる(と思ったがならないかも知れない…)。 方形波の方は5万項も取ればほぼ収束しているが,インパルスの方は収束が悪いように見える。$ x=\frac{\pi}{2}を代入すると,
$ y = \frac{4}{\pi} \left\{ 1 + \frac{1}{3} + \frac{1}{5} + \frac{1}{7} \cdots \right\}
となり,この級数は$ 1/xを積分した $ \log xと同様の増加をすると考えられる。よって,インパルスの所で発散し,かつその増加速度は遅いことが予想される。
ここまでの議論が正しいとすると,この2つの波形,似ても似つかないが,位相こそ違えど高調波の振幅が全く同一であるという驚くべき結論となる。 2020/04/25