スピーカー・ユニット構造
書きかけ
#日記 #2024年 #7月24日 2024年7月-24 07:13
#スピーカー・ユニット
スピーカーの音質向上には、ユニットの技術的な向上が大きく寄与しているので、その時々に理解したことを書きためておきます。現時点では、私自身が、ユニット部品の用語集として参照することを想定して書きつづっています。
あらかじめ断っておくと、このページはその時々の私の関心事項についてWeb上で検索して得た情報に自分なりの解釈を加えて列挙しているに過ぎず、体系的に学ぼうとしているわけではないので、必要事項が不足していたり、間違ったことを書いていたりします。
部品名称
ダイアフラム: ボイスコイルの振動を音波に変換するための振動板、コーン形状の場合コーンとよばれる
フレーム: ダイアフラムをはじめとする各音響部品を所定位置に固定するための骨格部
ダイアフラムの振動により変形したり共振したりしない、ユニットの重心が振動しない、ようにユニットを支える骨格構造
フランジ: ユニットをバッフルにとりつけるための「つば」(輪状のふち)の部分
エッジ: ダイアフラムをフレームに固定するための振動吸収部品。サラウンドとも呼ばれる。
フェイズプラグ:
磁気回路
ボイスコイルに対して磁束を与えるための回路。永久磁石から発する磁束をボイスコイルが振動する間隙付近まで導くための回路で、軟磁性の素材を用いて構成される。ボイスコイルの可動域となる磁極部品(ポールピース)間の間隙(ギャップ)を通る磁束密度に歪みがあると、音にも高調波などの歪みが生じるので、音質にとても重要な部品だと言える。
永久磁石には、フェライト磁石やネオジム磁石、古くはアルニコ磁石が使われる。それぞれ特性が異なるため、異なった形状・特性の磁気回路が用いられる。磁気回路は各種永久磁石に最適化されたものがあり、どの磁石が高音質ということはない。ただし、アルニコ磁石やさらにはネオジム磁石を用いた場合は磁気回路がコンパクトになり、フェライト磁石を用いた場合には安価に作ることが可能となる。ウーファーは、ユニット本体が重いほうが制振に寄与する上に磁気回路が高温となるので、高価かつ高温に弱いネオジム磁石を使うメリットがないが、イヤホンなどはネオジム磁石の一択となる。
参考:  『フェライト磁石かアルニコか」(志賀氏のオーディオ科学) https://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/magnetcirc.htm
ボイスコイルの位置によって、透磁率の高いフェライト磁石由来のインダクタンスの大きさに変化が生じる場合があり得て、その場合は制御が甘くなる。漏えい磁束を如何に抑えるかがポイント?ボイスコイルから発生する磁気の影響を減らすには、ボイスコイルとのギャップを形成する磁気回路の磁気抵抗の大きさが決め手のようだ。以下のリンクで、PARC Audioの富宅さんが書かれている鉄芯の量の変化に相当する変化は磁気抵抗が小さいと生じる。
参考: https://dream-creation.jp/blog/218
磁気回路そのものの歪み対策
Wavecorは、磁束の歪みを低減するよう形状を改良した磁気回路を開発し、偶数次高調波を低減する工夫(バランスド・ドライブ)を行うなど、様々な工夫を施している。
参考: Wavecor's Balanced Driveに関するテクニカル・ノート: https://www.wavecor.com/Balanced_Drive_technical_paper.pdf
DALIは、磁気回路の芯材に用いる鉄粒子を非電導性の樹脂でコーティングし、渦電流の発生を抑制することにより磁束の歪みを低減(Soft Magnetic Compound(SMC)技術)
https://www.dali-speakers.com/en/sound-academy/tech/patented-soft-magnetic-composite-smc/
エンドユーザ向け製品にもSMCが採用される。たとえば、Opticonではツィーターに、 SONIKではウーファーにSMCコアを採用、ただし、高級機と異なり、ポールピースに限定。
ダンパーをボイスコイルの前後側2ヶ所に設置してボイスコイルがまっすぐに動くようにする手法もとられている。Cmsが小さくならないようにダンパー素材には柔らかいものを使う必要があり、エアフロー対策も必要なので、線形性を高めるにもうひと工夫必要となる。Wダンパーと呼ばれたりする。
面白い試みとしては、磁石を直接ボイスコイルに対峙させるMagnet-only磁気回路もある。
https://hal.science/hal-02504314v1/document
通常の磁気回路とMagnetic-only磁気回路の比較
回路構造: Fig.2
BxL(force factor): Fig3 (controlの磁気回路の特性がどうか)
インピーダンス、位相の比較 : Fig4
高調波歪みの抑制: Fig5, 6  特に3次高調波を抑制
結局のところ、フェライトで良い音が出せるユニットメーカーは、磁気回路の設計技術(非線形応答のシミュレーション技術)が高い、ということなのかと。
脱線:
フェライト磁石の発明者の一人は、私の子供が住んでいる愛知県刈谷市出身の加藤与五郎氏(私は子供に教えてもらうまで知らなかった)で、私も加藤氏の生家のそばの野田地区の公民館を何度か利用したことがあることもあって、なんとなく、フェライト磁石ベースのユニットの音質を高める工夫をしているスピーカー・エンジニアを応援したくなってしまう。(ネオジム磁石も日本人の発明だし、レアアース問題を解決する新しい磁石が開発できれば良いが、そこは、もうスピーカー開発者の領分じゃないし、スピーカーよりも開発に時間のかかることなので。)
ボイスコイル
コイルを巻き付けた筒状の部品で、ダイヤフラム(コーン)に物理的に接続されている。コイルに音声信号が流れると、磁気回路から受ける磁束に対してローレンツ力が発生して一次元方向の振動が生じ、連動してダイヤフラムが振動する。
稼働時は、容易に100℃を超え、最大許容入力で200℃を超えることも珍しくない。
PARC Audioさんのブログ(https://dream-creation.jp/blog/8 )からの抜粋
ボイスコイルは、自動車の動力源であるエンジン、モーターそのもの
ボビンと呼ばれる芯材の周りに、導線を巻いてコイルを作り、導線の引きだし部に絶縁シートを巻く
導線
線材
銅: ウーファー、フルレンジで広く使われる。重いので、ツィーターにはそれほど適さない
アルミ: 軽量化目的でツィーター用に使われる。原材料コスト、剛性が低く歩留まりが悪い(断線しやすい)などのコストの問題と、ハンダづけしにくいこと、銅よりも導電率が低く効率が落ちる点が欠点。
CCA線: アルミ線の周りに銅線を被膜加工したもので、「銅(Cu)クラッド(clad)アルミ線(Al)の略」。アルミの欠点を抑制する。高級モデルでの採用は比較的少ない(2008年当時)。
形状
丸線: 隙間なく巻いた時の充填度が低くなるので、磁束密度を上げられない欠点がある
角形
リボン線(つぶし線): 丸線を潰して長方形状にしたもので、角にRがつくのが欠点
スリット線: シート状の材料にスリットを入れて作成された線材。高額で、国内高級モデルに採用。
真四角(平角、レクトアングル)線: つぶし線の一種だが、角のRが小さく充填率が高くなる。
巻き方
1層巻き: 奇数巻きは巻き終わりから導線を折り返すための加工で高額化する欠点があるが、1層巻きは音質が良いとされて、採用されることがある。
2層巻き: 一般的
4層巻き: サブウーファーなどで使われる
ボビン
紙やポリイミドフィルム(カプトン)、アルミ、ガラスイミドフィルムなどが広く使われる。アルミは耐熱温度・放熱・剛性に優れるが、渦電流が生じて過剰に制動されるのと内部損失が低くQ値が高くなり硬めの音質になるのが特徴で、ツィーター以外には使われない。素材の内部損失などが音質に影響するとされる。ガラスイミドフィルムは、重いが耐熱性に優れるため、ウーファーに使われる。
サイズ( 内径): コスト、耐パワー、周波数レンジに影響。
コストについては、ボビンそのものというよりは、磁気回路のポールピースの設計サイズに影響するため、磁気回路のコストと言える。複数のサイズの振動板で共通化されることもある。
サイズを大きくすると、コイルの磁束密度を上がることができ、また表面積が増えるため放熱性能が向上するが、重くなるために磁束密度とのバランスが能率に影響する、L(インダクタンス)成分の影響で高域成分が減衰する。
コイルのL成分による高周波減衰を抑制するために磁気回路にショートリングを設けてキャンセルするなどの対策がとられることがある。
ダンパー
ボイスコイルが磁気回路内で正確に動作するように、物理的に支えるする。動径方向にブレないように支える。スパイダーとも呼ばれる。
振動板のまわりのエッジも、振動板を介してボイスコイルを支える。エッジとダンパーの硬さが、ユニットのサスペンション機構の硬さ。
T/Sパラメータでは、サスペンションのコンプライアンス(緩さ)として、1Nの力で振動板を押した時に生じる移動量Cms (mm/N)が使用される。
ウーファーやツィーターでは、正確にボイスコイルを動かすためにCmsは 1.0 (mm/N)未満に抑えるケースが多いが、最近の低音域を広げたフルレンジでは1.0〜2.0 (mm/N)に近い値をとるものが多くなっている。
たとえば、TangBandのハイエンドユニットではダンパーを緩くしており、Cmsが2.0(mm/N)付近となっている。Markaudioのダンパーレスは他のフルレンジと同等のCmsを示しており、エッジ等でしっかりと支えているようだ。