第10章「情報の非対称性」
モラルハザードの例を探してみましょう。どのような場合にプリンシパル側が望まない行動をエージェントが取るのでしょうか。例えばミクロ経済学の定期試験を考えます。
ミクロ経済学の講義を真面目に受けていたとしても、またシラバスで求められている予習や復習を実行したとしても、定期試験にのぞむ際には少しだけ緊張します。なぜかというと、どのような問題が試験に出るのかは事前には分からず、場合によっては不得意な部分が出題されるかもしれないからです。すべての部分を完全に理解するというのが難しいのであれば、同じクラスを受講する学生の間でも不平等が発生する可能性があります。ある学生は講義の9割の内容を理解していたにもかかわらず残りの1割から出題されてしまえば適切に解答できません。これに対してほとんど勉強しなかった学生がたまたま教科書の一部だけを読んで試験を受けたところ、そこが出題されて解答できることもあるでしょう。
ここで成績について保険があったとしたら、どのようなメリットがあるでしょうか。