20250306
退職金税制の見直し
退職金とは
法律上必ずしも必要なものではなく、退職金制度がない企業もある
賃金の後払いの面と長年の勤労に対する報償的給与の面があるとされる
そもそも退職所得控除で優遇されている
勤続年数×40万円(最低80万円)
長期勤続(20年を超える)の場合、税制面での優遇措置がある
勤続年数20年超800万円+(勤続年数ー20年)×70万円
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出典:国税庁HP
退職所得控除額と課税額の計算
10年で500万円の場合
$ 500-40\times10=100万円(これの半分の50万円が課税退職所得金額)
20年で1000万円の場合
$ 1000-40\times 20=200万円(これの半分の100万円が課税退職所得金額)
40年で2000万円の場合
$ 2000-(800+(40-20)\times 70)=-200つまり所得はゼロ
20年で大きな違いが生まれる→同じ1000万円の退職金でも、勤続19年と21年では大きな違いになる
3月5日の参議院予算委員会で石破茂総理が見直しに言及した。なぜいま議論されているのか?
退職金の歴史
江戸時代:丁稚奉公とのれん分けから独立支援金としての金銭支払いへ
明治時代:定年退職後の生活保障として退職金制度
第二次対戦後:退職金は賃金の後払いで、従業員の老後の生活保障(年金制度が未発達だった)
1952年:税制上の「退職給与引当金制度」を導入
高度経済成長期(1955〜1972年頃まで):人手不足対策と離職抑制の仕組み
そして現在
なぜ税制面で支援したのか?
企業の視点
離職抑制をしたい(長く真面目に働いて欲しい)
労働者の視点
退職金の優遇税制があると退職金として受け取った方が有利
なかなか計画的にお金を使うのは難しい
国の視点
計画的に老後の資産形成をしてほしい
三者にメリットがある仕組みだった
                  
しかし時代が変わった!
大企業でも不安定な時代
人手不足で前向きな移動と後ろ向きな移動が増える
労働移動の阻害要因になる
人口減少下では社会的な適材適所を実現したい
労働者の視点からも、せっかくの機会なのにお金が理由で動くのを躊躇するのは勿体無い
そもそも賃金は後払いできないはず
禁止しないまでも税制面で優遇する必要性が低下した
注意点
既存の契約と新規契約の区別は必要
既存契約は、退職金の優遇税制があることを前提に行われている
生活設計も優遇税制が前提
                   
なぜ労働移動が必要なのか。阻害要因といっても流動化なんてしたくない!
働き方が変わる二大要因とは?
人口減少
急速な技術進歩
社会的な適材適所を実現するために
企業の中での流動性=内部労働市場
企業間の流動性=外部労働市場
これまでも雇用は流動していた
しかし日本的雇用慣行では、主に社内での流動
これからは企業を超えた労働移動の比重が高まる
途切れない雇用と処遇の向上のために何が必要か?
労働者が求めているのは、特定の企業での勤続ではなく、収入が途切れず待遇が上がること
新しい安定を実現するために何が必要なのか
雇用の流動化の議論
動かないのを動かす話
生産性の低い人を減らしたい(解雇規制の見直し?)
他社でより活躍できる人の阻害要因を減らしたい(年金、退職金)
本人のためではなく、他人のために移動して欲しい(玉突きの労働移動)
動き過ぎるのを止める話
ジョブ型の議論と人的資本投資
二極化した正社員のままでは不安定雇用が増える→多様化が必要
一つの企業での長期雇用から、途切れない雇用による新しい安定へ
雇用の流動化のために必要なのは?
1, こそ勉
•ステップアップのために自主的に学ぶ
2, ライザップ
•なかなか自律的に学ぶことは難しい。伴走者が必要
3, ビリヤード
•円滑な労働移動のために、玉突きの移動が必要なことも