20241129
2025年度安藤ゼミナール第一次入室試験の講評
みなさん、こんにちは。日本大学経済学部の安藤至大です。
安藤ゼミの入室試験(第一次)を受けていただいた皆さん、ありがとうございました。本日の13時に、合格者の発表が行われました。皆さんもご確認いただいたと思いますが、本年度は12名が合格者として決定しました。応募学生が33名だったので、40%弱が合格するという形になりました。
合格した皆さんはおめでとうございます。来年4月から一緒に研究活動に取り組みましょう。みなさんと一緒に学べることを、現役ゼミ生と同じく、とても楽しみにしています。
そして今回、残念ながら合格とはできなかった学生の皆さんには、これから自分が希望するゼミに入っていただくためにも必要なアドバイスができればと思い、この講評を書いています。
今回のようなエントリーシートや面接による採用試験を、皆さんは今後、たくさん経験することになります。例えば、企業のインターンシップでもそうですし、より重要度が高いものとしては、就職試験などがあります。
そこでどのような判断基準で合否を決めたのかを皆さんにも理解していただきたく、以下では簡単に説明したいと思います。
1. エントリーシートの提出
まず期限を設けて、エントリーシート(ES)の提出をお願いしました。ここでは質問の意図を的確に捉えて、丁寧な回答がされているESを高く評価しました。例えば「(a)(b)(c)の3点について書いてください」とあったときに、全てについて回答していることは必須となります。これに対して、期限までに提出がない学生はもちろん、質問に対して1行や2行だけ簡単に返事をしている場合には評価が低くなってしまいます。この点については、経済学の重要なキーワードの一つであるシグナリングについて調べてみてください。
ESに記入する際には、このESを作成している側が、それぞれの項目において何を知りたいと考えて質問をしているのかをよく考える必要があります。聞かれたことに答えるという基本ができているのかが問われています。その上で、相手に伝わりやすくなるように配慮された文章であることも必要です。
また今回のESを提出していただくにあたり、Google Classroomやゼミホームページを通じて、いくつかの資料を事前に共有しました。例えば、ゼミの活動で重視している受託研究のホームページや2年前に公開した動画「学部一年生からはじめる就職活動」などです。みなさんはこれらの資料等をすべて視聴しましたか?このように書いても、「まあそれなりに見ておけばいいんでしょ?」と思うひともいるでしょう。それは違います。就職活動等でもそうですが、採用する側が公開した資料はすべて確認しておく必要があります。今回の入室試験でも、事前に公表された資料を読んでいるかどうかは、ESの記載内容や表現、また面接など様々な場面において容易に確認できました。
今回、名前や出身高校などの個人情報が記載された1ページ目は削除した上で、現役のゼミ生にもESを読んでもらいました。ゼミ生には、11月15日(金)の深夜に共有したESを18日(月)の朝までに読んで評価リストの提出を求めています。このようにESを評価する人は、短期間に数多くの書類を読むことになります。どのようなレイアウトで、またどのような文章の長さでESに記入すると読みやすいかといった点に注意する必要があるでしょう。フォントの選択や太字にする、また色を変えるなどの工夫をしてくれた学生もいましたが、このようなESは評価が高い傾向にあります。また今年は写真を有効活用している学生もいました。
2. 面接試験での質疑
会場となる教室に入るところから試験は始まっています。企業の採用試験などではなく、大学一年生が対象なのでそれほど厳しいことは求めていません。しかし入室時に挨拶をして、自分から名前を告げて、面接担当者から「どうぞ」と声をかけられてから座る学生は自然と好印象を抱かれます。
面接担当者は、現役のゼミ生に依頼しました。そして応募学生の多くは、質問内容に対して簡潔に回答するなど、的確に行動できていたと思います。また今回は15名程度の現役ゼミ生も面接に同席しましたが、多数の眼がある中で萎縮することなく、普通の受け答えができる学生が多かったことも評価できます。
まずは自己紹介と将来の目標について、またそのために何をやっているのかといった点をお尋ねしました。ここでも質問されたことの意図を理解して回答する学生は高く評価されました。続いて安藤ゼミを選んだ理由についての質問を全ての応募学生に対して出しました。この質問に対して、ゼミを選んだ理由として明確な理由がない場合は高い評価は得られません。このゼミで扱う研究内容や活動内容を理解した上での回答がなされることが求められます。
続いてミクロ経済学の理解度を確かめる質問、また思考力を問う質問をしました。前者については、ミクロ経済学の内容がしっかりと理解できていると思われる学生は安心してゼミ生として受け入れることができます。また後者の考えてもらう問題については、すぐに回答できなくても、すぐに「わかりません」と投げ出してしまうのではなく、一生懸命考えようとする学生は高く評価されました。
3. 合格者の決定について
ゼミナール入室試験においては、企業の採用試験などとは異なり、学生に対してそれほど高い能力や意欲を求めてはいません。皆さんはまだ大学1年生であり、これからゼミの活動も通じて成長していくわけですし、そのためにゼミを含む大学教育があるからです。
しかし入室試験では、全員をゼミ生として受け入れることができません。そこで参加意欲が高く、またやりたいことが明確な学生、そしてこれまでに向上心を持って学んできたことが確認できる学生を選ぶことになりました。
加えて自分がゼミに参加することで周りの学生に対しても良い影響を与えられる、貢献できるとアピールしてくれた学生は高く評価されました。ゼミは活動を通じてゼミ生のみなさんが主体的に学んでいく場であり、学生間での協力や共同作業がとても重要になるからです。
反対に、個人としての能力は高くても、他の学生との共同作業で期待される役割を果たすことに不安を感じる学生もいました。あくまでゼミの活動は集団で行われます。そしてこれは就職の際にも同じなのですが、自分一人で何かを成し遂げることよりも、集団の力で何ができるか、何をしたいかを考えている学生の方が相対的に高い評価を受けました。
4. おわりに(今回、残念ながら合格とはできなかった学生の皆さんに向けて)
今回、残念ながら合格とはできなかった学生は、2次試験への準備のためにも、この講評の内容をよく確認していただきたいと思います。また合格した学生についても、自分の事前準備や当日の受け答えについてぜひ振り返っていただければ幸いです。
全体として、言葉遣いがしっかりしているか、質問に対して丁寧な回答ができているのかは重視しました。先述のように、皆さんはこれからの人生で数多くの面接に直面することになります。ぜひ今回の経験を今後のために有効活用してください。
5. ゼミ入室試験(二次)について
安藤ゼミでは、二次試験は実施しません。以下では、私がお勧めするゼミについて述べます。
まず安藤ゼミで3年生が実施している企業からの受託研究は、飯星ゼミでも3年次に同じ取り組みに参加することが予定されています。また飯星ゼミと安藤ゼミでは、定期的に交流を図ることも計画していますので、参考にしてください。また多鹿ゼミの学生も、2024年度はゼミの課外活動として受託研究に参加していました。次年度以降も参加する可能性があります。データ分析に興味があれば飯星ゼミを、またミクロ経済学をしっかりと学びたい学生には多鹿ゼミをお勧めします。
次にデータ分析についてしっかりと学びたい学生に対しては、行武先生のゼミもお勧めします。行武ゼミでしっかりと学ぶことができれば、一橋大学などの国立大学を含む他大学の大学院に進学することも進路として考えることが可能になります。
また安藤は大学では労働経済学を教えていますが、安藤ゼミでは労働経済学を直接的には扱っていません。労働経済学について学ぶことを希望する学生には平河ゼミを推薦します。
以上で講評を終わります。みなさんが大学を卒業して10年経った頃に「日本大学経済学部で学んでよかった。日大を選んでよかった」と感じてもらえるように、私を含めて多くの教員が努力しています。みなさんの人生がより良いものになるように願っています。
2024年11月29日 日本大学教授 安藤至大