20210508
2021年度労働経済論第4回質問事項への回答
いただいた質問
資料の20ページにおいて、$ 0.8w_H+0.2w_L-10\geqq 20ののち、$ w_Hに$ w_{L}+20を代入していますが、ここの理解に少し悩んでいます。
回答
まず望ましい契約は、参加制約とインセンティブ制約の両方を満たすことが必要です。
20ページの$ 0.8w_H+0.2w_L-10\geqq 20というのは、労働者が努力することを前提とした参加制約です。他の仕事で楽に20万円稼げるなら(これが右辺です)、いま注目している会社で真面目に働いた場合の労働者にとっての満足度の大きさ(これが不等号の左辺です)は20万円以上であることが必要です。
これに対して、資料の18ページから19ページでインセンティブ制約について説明しています。その結論は、良い結果の場合の賃金$ w_{H}と悪い結果のときの賃金$ w_{L}に十分な差がなければ、努力させることはできないというものです。そして計算した結果として、その賃金の差は最低でも20万円という結論が得られました。
もう一度20ページに戻ると、ここでは参加制約とインセンティブ制約の両方を満たす契約のうちで、企業の視点から最も利益が大きいものを探しています。労働者が努力していることを前提とすれば、企業にとってはできるだけ賃金を低くすることが会社の利益につながります。そこで参加制約もインセンティブ制約もギリギリで満たすような契約を探すことにします。
ここで出てくるのが「$ w_Hに$ w_{L}+20を代入」するという話です。いま参加制約の式$ 0.8w_H+0.2w_L-10\geqq 20にインセンティブ制約の条件を加えて、二つの式を一つにまとめようとしています。
その際に、インセンティブ制約が求めているのは、$ w_{H}と$ w_{L}の差は20あれば大丈夫ということですので、そのギリギリを考えるなら$ w_{H}と$ w_{L}の関係は$ w_{H}=w_{L}+20と書くことができます。これを参加制約の式$ 0.8w_H+0.2w_L-10\geqq 20に代入して、二つの条件を一つの式にまとめています。