音楽史
『世界の音楽大図鑑:コンパクト版』ロバート・ジーグラー(監修), 金澤正剛(日本語版監修), 河出書新社, 2022
18世紀 中産階級の台頭
音楽がダンスなどのBGM=ながら聴き目的ではなく、音楽鑑賞自体を目的にされる
p.120
ソナタが人気を集めた背景にあったのは、楽器を変える経済力があり、自分も音楽レッスンを受けたいという中産階級の出現である。だが、バロック時代に流行した宮廷風の優雅な楽曲は、彼らには人気がなかった。こうした人々は、なにかをしながら音楽を漫然と聴くのではなく、本格的に音楽を聴きたい、と思っていたのである。
これを受けて登場したのがソナタ形式、すなわち、長い時間、聴き手の注意をひきつけておくことのできる、そして、繰り返しにあまり依存しない音楽形式だった。
p.314
アメリカの古い世代は、ロックンロールを脅威と感じた。それは、彼らの社会秩序や、性的な行為に関する基準、さらに、長きにわたる南部の人種隔離も、覆されてしまいそうに思えたからである。フランク・シナトラは、自分の音楽とファンを横取りされたように感じたのだろう。彼はこう述べている。「(ロックンロールは)たいていバカなまぬけどもが、歌ったり演奏したりつくったりしてるんだよ……もみあげをはやした非行少年たちが、火星の音楽を地球上で演奏しているようなものだな」
ただ、実際には、黒人の音楽を白人が演奏しているというだけのことではなかった。ラジオの大衆はこのとき初めて、演奏しているのが白人なのか黒人なのか、確信を持てないという体験をした。
p.315
ロックンロールは1960年代初頭以降、リアルタイムのジャンルではなくなった。ロックンロール・ミュージシャンたちも、「オールディーズ」路線でしか活動していない。
ある意味、ロックンロールの終焉によって、黒人と白人のミュージシャンたちはまた、別々のところにもどっていったのである。