日本仏教と庶民信仰
p.57
「葬式仏教」という自嘲または反省が仏教側から出てくることに対して、仏教僧侶の行う葬儀がマンネリに陥っているのではないか という指摘
このような葬式における民衆と僧侶の食いちがいは、肉親を失った人々のもつ霊魂の実在の実感を、僧侶が持ちえないということにあるだろう。
p.228
仏教は理念でも観念でもない。いわんや恰好のいい哲学でもない。人間の心の奥底をゆさぶる感動である。
ある意味では、文字は人を非人間的にした。すべての自称をシュプレッヒコールのような理念だけでとらえ、具体的な全体として心でとらえる能力を弱らせた。それをおぎなうために、文字でない文字の表現——すなわち詩でひょうげんしようとしたのだが、詩もイントネーションやリズムのある朗唱によって、はじめて感動を伝達できるのである。それは文字よりも芸能(歌)にちかいといえるだろう。