トンデモ学説をぶった斬ったら比較言語学の入門書になった件
#本 #人文 #言語学 #学者は真実を隠してる
『トンデモ学説をぶった斬ったら比較言語学の入門書になった件』
大山祐亮 著
晶文社
https://www.shobunsha.co.jp/?p=9420
「こうだったらいいなという結論ありきで論を組み立てるな」「研究には夢やロマンの介在余地はない」「わからないことはわからないと認めよ」などの訓示は比較言語学に限らず、さまざまなトンデモ学説を見分けるコツになりそうだ。
本来はシカトで良いはずのトンデモを無視できないという状況は、望月昭秀編『土偶を読むを読む』にも共通している。
自然科学や形式科学と異なる人文学の原理についても考えさせられた。古代を探求する人文学では、参照できる資料が尽きて「わからない」が最終結論になったり、これ以上研究できることが尽きて学問が終わりを迎える状況がいつか訪れる。学問においてそのような店じまいの状況が訪れるとこれまで想像できなかったため、いつか来る「終わり」への教訓を示唆されたこともよかった。
研究がトンデモに至る経緯は、視野狭窄、学会内の政治ゲーム、「学者は真実を隠している」的なアカデミズムへの反発だけでなく、国民国家の民族主義・ナショナリズムも十分動機になり(例:印欧語族の祖と仮定された「アーリア人」概念)やっぱナショナリズムは諸悪の根源よなと思った。
装丁・組版については、おもしろいところをデカ文字で組むところや、本文の節々に往年のテキストサイトを非常に感じた。組版も最近流行りのかんじの余白取り。本文中のノンブルが頻繁に表に潰されるのは正直なところ、それやっていいんだ?(反則につま先が触れてるのではないか)と思った。表紙の二色刷りのグラフィックは良い。
装丁・本文組版・文体はポップだけど、人文学研究で必要な大前提の組み立てに真摯に取り組んでいるのを感じた。これまで親しみのなかった比較言語学に触れられて、また比較言語学を通じて他の学問分野にも想像が及び、面白かった。