達成目標理論
ドベックDweck,C.S.は達成動機づけを,有能さを希求する動機づけと考え,人は自分の有能さを求め,自分のスキルを査定するために達成目標を設定するとした。 彼女はまず,どのような目標を設定するかは知能に関する素朴理論ともいえる暗黙の知能観implicit theories of intelligenceによると考えた。 一つは知能を本人の意志で変化可能なものと見る増大理論 知能観として増大理論をもつ人は努力により能力を伸ばせると考えるので学習して能力を伸ばすことを目標とする学習目標をもつという。 もう一つは知能を制御不能で変化しがたい実体ととらえる実体理論 一方,実体理論をもつ人は能力を固定的なものととらえるために,能力が低いと判断されるのを避け,能力が高いと判断されることを目標とする遂行目標をもつという。 そして,それぞれの達成目標をもつ人たちの行動パターンは現在の自分の能力に対する自信の有無により異なるとされる
すなわち,遂行目標をもち,自分の能力に自信がある場合には熟達志向(困難な課題にも果敢に挑戦する,努力する)を取りやすいが,自分の能力に自信がない場合は,挑戦を避け,すぐに無力感を抱きやすい。
一方,学習目標をもつ場合には自分の能力への自信の有無に関係なく,結果が問題ではなく能力を伸ばすことが目標なので熟達志向的である。
この達成目標は個人差として扱われることもあるが,状況によって変化するとする考えもある。
たとえば,担任教師が相対評価を強調する場合は,クラスの全員が遂行目標を志向しやすくなる。
また,学習成果との関係については学習目標をもつ方が遂行目標をもつよりも優れると考えがちであるが必ずしもそうではない。
機械的暗記学習では遂行目標をもつ方が優れるという指摘もあり,どのような形で学習成果を測定するかによって異なる。
なお,この二つの達成目標のよび方は研究者により異なり,学習目標を熟達目標,遂行目標を成績目標ということもある。