社会的アフォーダンス
https://gyazo.com/5646202587e6f6f5499a77e4706524ed
生態学的実在性は, 椅子と人間の間の 〈座る〉といった物理的関係性だけではなく, 〈郵便制度〉 のような抽象的な関係性, つまりあらゆる社会的アフォーダンスが常に〈実在〉 することを示唆する. Gibson, 1979は, 社会的アフォーダンスの例として郵便制度を挙げているが、 確かに彼の主張のように, ポストは 〈投函) をアフォードする。 だがそれだけではポストとしての役割を果たしているわけではなく, 手紙が相手に〈届く〉 ことが成立しなければ厳密に 〈投函〉をアフォードしているとはいえない. これをデザインという観点から見てみる。 郵便制度という関係性は “送り手” “受け取り手” “手紙” “配達人” という4項関係からなるアフォーダンス群と考えられる. 社会制度としての取り決めとしての郵便制度に従って人々社会生活を行うこと自体が、 関係性を構築し, この抽象的関係性を現前化させるための社会的デザインであるといえる. その中で, ポストは, 郵便窓口と同じく我々が郵便制度を利用するためのデザインであり,かつ手紙を入れる目印となるためのシグニファイアである. つまり, ポストそのものは 〈郵便制度〉 自体をアフォードしている (cf.Gibson, 1979), というよりも, それを支えるためのデザインである, という説明の方がより適切である.社会的アフォーダンスはどの時空間においても可能性として存在しうるが,それを現前化するためには適切なデザインが必要となる, ということである. このデザインの記述として, フレーム意味論が有効であることを次節以降で論じる.