狩りの成果を自慢しない
狩りの成果を自慢しない
彼らのような平等主義的な部族では、トップクラスの狩人たちが他の者をしのいで突出するのを防ぐ対抗策も必要になる その一つの方法が、獲物の価値を最小限にみなすこと
賢明な狩人は仲間のそんな性質を知っているから、あまり自慢したりしない リチャード・リーの記録では、クン・ブッシュマンの狩人は狩りから帰ってきても一言もしゃべらないで火の前に座り込み、誰かがやってきて今日は何を見たかと聞くのをじっと待つという そこで狩人はなにげない口調で「いや、私は狩りはうまくないから。何も見なかったよ(少し間をおいて)……ほんの小さいやつをひとつだけだ」
リーにこの話を教えたものはさらに、その言葉はかなり大きな獲物を倒したことを意味しており、狩人はひとりほくそ笑むのだと付け加えた
だが狩人とともに肉を切り分ける者さえ、喜びは内に秘めておかねばならない
獲物のところに着くやいなや、彼らは「こんな骨の山を運ばせるために、俺たちをわざわざこんなところまで連れてきたのか!」とか「このために今日一日を台無しにしたのか!」などと叫ぶ
それから大喜びで獲物を切り分けて肉を持ち帰り、仲間全員で心ゆくまで食べる
別の情報提供者は狩人をこんなふうにあざける理由を次の用に説明した 大きな獲物を殺した若者は、自分がひとかどの者であり、ほかの者は自分より劣ったしもべだと思うようになる。そんなことは認めるわけにはいかない。自慢するやつははねつけなくてはいけない。さもないとプライドが災いして、いつか誰かを殺すことになる。だから私たちは、獲物に価値がないような言い方をするのだ。こうすれば狩人ののぼせた心は冷えて、礼儀正しくなる。 仲間同士に大きな地位の格差が生まれたら、この相互交換のシステムそのものが崩壊してしまう