三位一体脳仮説
mtane0412.iconの理解
「下等生物」から「高等生物」になるにつれて脳部位が追加されていく、みたいなナイーブな解釈は誤り
そんな単純ではない
3つにきれいに分かれていない
中枢神経系の進化は爬虫類よりもさらに前に遡ることができる
それでも触れられることの多い
脳部位を進化的に比較するという視点が評価されている
辺縁系と新皮質の関係性はそこまでずれていない
三位一体脳仮説の用語を用いるのは危険そう
直感的に理解しやすい→誤りやすい
実際に心理学徒以外の一般層にも大人気のようだ
三位一体脳仮説は解像度が低い見方だと考える
解像度の低さゆえに誤った部分を含む
Q. 私たち人間の脳は,爬虫類の脳,下等な哺乳類の脳,そして高等な哺乳類の脳の三つからできているって本当ですか?
A. 違います!
ちなみに辺縁系という言葉は,古い哺乳類の脳のことを指してマクリーンが導入したものです。 知らなかったmtane0412.icon
そして,新しい哺乳類の脳はヒトで顕著に発達している新皮質のことで,問題解決や記憶・学習に関わっているとしました。 さて,三位一体脳仮説が正しいとしたら,哺乳類以外の脊椎動物には新皮質がなく,古い脳しか持っていないことになります。本当でしょうか?
実は,「新皮質」がないというのは本当です。
哺乳類の大脳にはきれいな層(皮質)構造があるのに対して,鳥類の大脳には層構造は見当たりません。
このため,比較神経解剖学の父とも呼ばれるドイツのルートヴィヒ・エディンガー博士は,鳥類の大脳はほぼすべてが基底核(線条体とも呼ばれる)でできていると考え,大脳の大部分の領域に線条体の名をつけました。20世紀初頭のことです。 その後,神経連絡や化学物質の分布,胚発生時の遺伝子発現などの対応関係の研究が進むにつれ,鳥類の「基底核」のうち,哺乳類の基底核に相当するのは一部分に過ぎないことがわかってきました。哺乳類の新皮質は,発生的な区分では外がい套とうと呼ばれる構造の一部ですが,鳥類でそれまで基底核と考えられていた領域にも,外套に相当する領域が多く含まれていたのです。 このような知見の積み重ねをもとに,2004年に鳥類の大脳領域の名称が改定され,それまで線条体の名がついていた多くの領域が外套と呼ばれるようになりました(図2)。鳥類の名称改定は象徴的ですが,鳥類だけでなく,魚類や両生類,爬虫類の大脳にも外套に相当する領域があることがわかっています。外套という構造自体は脊椎動物に共通していて,哺乳類が新しく獲得した構造というわけではないのです。
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エディンガーもマクリーンも,原始的な単純な脳に徐々に新しい脳部位が付け加わることで,最終的にヒトの複雑な脳ができあがったと考えました。これは原始的な動物から高等な動物,そしてヒトに至るという直線的な進化を仮定しているわけで,つまり「自然の階段」の考え方と一致しているといえます。「三位一体脳」のような考え方が直感的に受け入れやすいのは,脳の進化についても「自然の階段」の概念が人々の意識の深くにまで浸透しているためかもしれませんね。