インプット仮説
input hypothesis
comprehensible inputが最も重要であるとする
言語習得は母語も外国語も言語内容を理解することによってのみ起こる
自然な順序の提唱者でもあるクラシェン(クラッシェン)
沈黙期(silent period)
幼児がなかなか話し始めず、話し始めたら完全な文を話す例が多数報告されている
聴解優先教授法(comprehension approach)
インプットを重視した外国語教授法が大きな効果をあげているという
全身反応教授法(Total Physical Response = TPR)
先生が学生に指示を出し生徒が全身を使って反応する
慣れてきたら学生に命令を出させる
無理に話をさせずに沈黙期を保証する
この教授法はカリフォルニア、サンノゼ州立大学の心理学者ジェームス・アッシャーが1960年代に開発
リスニング能力が話す、読む、書くにも転移することが示された
70%聞く、20%話す、読み書き10%にもかかわらず、聞く、読む力はオーディオリンガル教授法の三倍のスピードで習得され、話す力、書く力も劣らないという結果
アメリカ国防総省外国語学校ではバレリアン・ポストフスキーがインプットが他の技能に転移することを示した
学期の後半から話す訓練をしたグループと最初から話すことと聞くことの両方を訓練したグループを比較
聴解優先のグループが総合力でまさり、話す能力もより優れていた
イマージョン
基本的に文法は教えずに大多数の教科書を第二言語で教える
トロント大学のメリル・スウェインらの研究では、イマージョンでフランス語を幼稚園から小学校6年くらいまで勉強した子供について、聞き取りに関してはネイティブと有意な差がないくらいのレベルに到達するという結果
その他の面についてはやや劣るという結果
インプット仮説はかなり信憑性があるものの、それだけでは説明できない現象がある
テレビからは言語習得ができないという現象
聴覚障害の両親の、主にテレビから言語を習得していた3歳9ヶ月の子供は話させると文法的にかなり不自然だった
クールの2つ目の研究では、生身の人間ではなくテレビからインプットさせたところ、中国語の音声識別に全く向上が見られなかった
受容的バイリンガル
2つの言語を聞いて理解することはできるが、そのうち1つは話すことができない
このような例ではインプットだけで言語習得をすることは不可能で、アウトプットも必要だという証拠だとも解釈できる
沈黙期を過ぎた子供や聴解優先教授法では、発話までにリハーサルを行っていると思われる
テレビや受容的バイリンガルはアウトプットの必要性がないのでリハーサルが行われない
言語習得に必要な最低条件はインプット+アウトプットの必要性という仮説
クラシェンらが無意識のリハーサルを経験したことがあるかをスペイン語を勉強中の高校生、大学生にしたところ、それぞれ69%、79%があると答えたが、すでにスペイン語を使っている上級者は10%しかあると答えなかった
言語習得初期の方がリハーサルが起こりやすいからだと結論
アメリカの大学で中級スペイン語の学生に対して3つの異なる教え方で効果を計測
1. リーディング
2. リーディングとディスカッション
3. 文法と作文
2が一番効果が高かった
対象人数も少なく教師の側の要因も統制が取れていないなど問題もあるが、仮説とは一致する
リハーサルはインプットを聞くときの集中度も言語処理のレベルも高まるとおもわれる
特に第二言語習得の場合、インプットだけでは意味的な言語処理でとどまってしまう傾向があるので、文法的な言語処理まで持っていくにはリハーサルが重要
クールらの研究では人間がテレビかというよりも、どれだけインプットに注意を向けていたかという別の要因が関わっていた
人間とテレビでは赤ちゃんが注意を向けていた時間がかなり違う
その後の研究では刺激音に注意を向けている子供とそうでない子供の間に音声識別のレベルに差が生じているという結果も出ている