PMBOK 第7版
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はじめに
1.1 『プロジェクトマネジメント標準』の目的
この標準は業界、場所、規模、実施アプローチ(予測型、ハイブリッド、適応型など)を問わず適用される
1.2 重要な用語と概念
プロセスまたはプロジェクトの最終的な所産や結果
成果にはアウトプットや作成物が含まれうるが、プロジェクトを実施することで実現しようとしたベネフィットや価値に焦点を当てることで、より広い意図が含まれる 戦略目標を達成するためにグループとしてマネジメントされるプロジェクト、プログラム、サブポートフォリオ、および定常業務 生産され、定量化可能で、それ自身で最終生産物あるいはその構成要素となる作成物
調和の取れた方法でマネジメントされる、関連するプロジェクト、サブプログラム、プログラム活動
個別にマネジメントしていては得られないベネフィットを実現する
独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施される有期的な業務
プロジェクトの有期性とは、プロジェクト作業やプロジェクト作業のフェーズに明確な始まりと終わりがあることを示している プロジェクトは単独で実行されることもあるし、プログラムやポートフォリオの一部として実行されることもある
プロジェクト要求事項を満たすために、知識、スキル、ツールと技法をプロジェクト活動へ適用すること
プロジェクトマネジメントとは、意図したい成果を上げるためにプロジェクトの作業を導くことを指す
プロジェクト・チームは、幅広いアプローチ(予測型、ハイブリッド、適応型など)を使って成果を上げることができる
母体組織によって任命された人で、プロジェクト・チームを率いてプロジェクト目標を達成する責任を負う
プロジェクト・マネジャーは、成果を上げるためにプロジェクト・チームの作業を促進し、意図した成果を生むためにプロセスをマネジメントするなど、さまざまな職務を遂行する
さらなる職務については、2.3節
プロジェクト目標を達成するためにプロジェクトの作業を実施する集団
組織を構築、維持、発展させることを目的とした戦略的な事業活動の集合
ポートフォリオ、プログラム、プロジェクト、プロダクト、定常業務はすべて、組織の価値実現システムの一部でありうる
ステークホルダーはそれぞれ、異なる方法で価値を認識する
顧客は、プロダクトの特定のフィーチャーや機能を使う能力として価値を定義することがある
組織は、ベネフィットからそのベネフィットを得るために要したコストを引いた額など、財務指標で判断される事業価値に焦点を当てることがある 社会的価値には、人々のグループやコミュニティ、または環境への貢献が含まれうる 2.1 価値の創出
プロジェクトはより大きな体系の中に存在する
政府機関、組織、契約など
組織はステークホルダーへの価値を創出する
プロジェクトが生み出す価値の例
顧客やエンドユーザーのニーズを満たす、新規プロダクト、サービス、または所産を生み出す
有益な社会貢献や環境への貢献を生み出す
効率性、生産性、有効性、または応答性を高める
組織にとって望ましい将来の状態への移行を促進するために必要な変革を可能にする
以前のプログラム、プロジェクト、定常業務によって得られているベネフィットを維持する
2.1.1 価値実現の構成要素
構成要素は個別で使うことも組み合わせて使うこともできる
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価値実現システムは、方針、手順、方法論、フレームワーク、ガバナンス構造などの対象である組織の内部環境の一部
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内部環境はより大きな外部環境の中にある
経済、競争環境、法的制約など
内部環境と外部環境については2.4節
価値実現システムの構成要素は、成果を生むために使う成果物を創出する
成果、選択、意思決定に焦点を当てることは、プロジェクトの長期にわたるパフォーマンスを強調することになる
成果は、組織によって実現される利得であるベネフィットを生み出す
次にベネフィットは価値を生み出す
すなわち、値打ちがあり、重要であり、または有用な何かを生み出す
2.1.2 情報の流れ
価値実現システムが最も効果的に機能するのは、すべての構成要素間で情報やフィードバックが常に共有され、このシステムが戦略に整合し環境に適応し続けているとき
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2.2 組織のガバナンス・システム
ガバナンス・システムは、
価値実現システムと連動して、円滑なワークフローを可能にし、課題をマネジメントし、意思決定を支援する
活動の指針となる機能やプロセスを備えたフレームワークを提供する
ガバナンスフレームワークには、監理、コントロール、価値評価、構成要素間の統合、および意思決定能力といった要素が含まれる
環境や価値実現システムのあらゆる構成要素に関連した変更、課題、リスクを評価するための統合的な構造を提供する
これにはポートフォリオの目標、プログラムのベネフィット、そしてプロジェクトごとに作成された成果物が含まれる
プロジェクトは、プログラムやポートフォリオの中で、あるいは独立した活動として遂行できる
組織によっては、プロジェクトマネジメント・オフィスがポートフォリオ内のプログラムやプロジェクトを支援するかもしれない
プロジェクト・ガバナンスには、変更の承認やその他のプロジェクトに関連したビジネス上の意思決定を行う権限の明確化が含まれる
プロジェクト・ガバナンスは、プログラムや組織のガバナンスに沿う
2.3 プロジェクトに関連した職務
プロジェクトを効果的かつ効率的に実行するために必要な職務を果たすことで、これを実現する
集団としての作業を調整することが、どのプロジェクトの成功にとっても極めて重要
状況によって調整方法は異なる
分権的な調整
集権的な調整
どのように調整がなされるにせよ、支援型リーダーシップ・モデル、およびプロジェクト・チームとその他のステークホルダーとの継続的で有意義な関わりが、成果の達成を支える
2.3.1~2.3.8はプロジェクトでよく見かける職務の例
顧客とエンドユーザーは常に同義とは限らない
プロジェクトを依頼した、またはプロジェクトに資金を提供している個人またはグループ
エンドユーザー
プロジェクトの成果物を直接使用する体験をするだろう個人またはグループ
2.4 プロジェクト環境
内部環境
組織内部の要因は、組織自体、ポートフォリオ、プログラム、別のプロジェクト、またはこれらの組み合わせに由来する
これには作成物、実務慣行、または内部の知識が含まれる
知識には以前のプロジェクトからの教訓に加え、完成した作成物が含まれる
内部環境の例
プロセス資産
ガバナンス文書
データ資産
知識資産
セキュリティと安全
組織の文化、構造、ガバナンス
施設や資源の地理的分布
インフラストラクチャー
情報技術ソフトウェア
資源の可用性
従業員の能力
外部環境
組織の外部要因は、プロジェクトの成果を強化したり、抑制したり、中立的な影響を与えたりしうる
外部環境の例
市場の状況
社会的、文化的な影響と事柄
規制環境
商用データベース
学術調査
業界標準
財務上の考慮事項
物理的環境
2.5 プロダクトマネジメントの考慮事項
各専門分野とその関係を理解することは、プロジェクトにとって有用
成果物がプロダクトであるから
プロダクトライフサイクル
導入から成長、成熟、撤退に至るプロダクトの進展を表現する
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プロダクトマネジメントの形式の例
プロダクト・ライフサイクル内のプログラムマネジメント
プロダクト・ライフサイクル内のプロジェクトマネジメント
プログラム内のプロダクトマネジメント
3. プロジェクトマネジメントの原理・原則
プロジェクトマネジメントの原理・原則は規範ではない
振る舞いへの指針
原理原則は道徳観を反映しうるが必ずしもそうではない
倫理規範が道徳に関係する
PMI倫理・職務規定はプロジェクトマネジメント・コミュニティにとって最も重要と特定された以下の4つの価値に基づいている 責任
尊重
公正
誠実
3.1 勤勉で、敬意を払い、面倒見の良いスチュワードであること
スチュワードシップは組織内外での責任をすべて含む
スチュワードシップには以下のことが含まれる
誠実さ
面倒見の良さ
信頼されること
コンプライアンス
スチュワードシップの全体的な視点では、財務面、社会面、技術面、そして持続可能な環境面での意識を考慮する
3.2. 協働的なプロジェクト・チーム環境を構築すること
プロジェクトはプロジェクト・チームによって実行される
プロジェクト・チームは組織および専門職の文化とガイドラインに従って作業し、しばしば固有の「ローカルな」文化を確立することがある
協働的なプロジェクト・チーム環境は、以下のことを促進する
他の組織の文化やガイドラインとの整合
個人とチームの学習および育成
望ましい成果を提供するための最適な貢献
チームの合意
プロジェクト・チームが確立し、個人とプロジェクト・チームのコミットメントを通じて支えられる、一群の取りうる行動の範囲と作業規範を示す
時間をかけて発展させるべき
組織構造
プロジェクト・チームは、プロジェクト作業と関連付けて個々人の作業を調整しやすくなるような構造を使用し、テーラリングし、導入する
プロセス
プロジェクト・チームは、タスクの完了と作業の任命を可能にするプロセスを定義する
包括的で協働的な環境を構築することで、知識や専門知識をより自由に交換でき、その結果、プロジェクトでより良い結果が得られる
役割と責任を明確にすることで、チームの文化を改善できる
プロジェクト・チーム内で、特定のタスクを個々人に委任することもあれば、プロジェクト・チーム・メンバー自身で選択することもある
これには、タスクに関連した権限、説明責任、実行責任が含まれる
権限
ある状況において、関連する意思決定を行ったり、手続きの確立や改善を行ったり、プロジェクトの資源を適用したり、資金を使ったり、承認したりする権利を持っている状態
明示的、暗黙的を問わず、権限はある主体から別の主体に付与される
説明責任
成果について回答可能な状態
説明責任は共有されない
実行責任
何かを行う、または果たす義務がある状態
実行席にインは共有できる
3.3 ステークホルダーと効果的に関わること
ステークホルダーはプロジェクトやパフォーマンス、成果に影響を与える
プロジェクト・チームは他のステークホルダーと関わることで、その人達の役に立つ
ステークホルダー・エンゲージメントは、価値の実現を前向きに進める
3.4 価値に焦点を当てること
価値はプロジェクト成功の究極の指標である
価値はプロジェクトを通して、プロジェクトの最後に、またはプロジェクトの完了後に実現できる
価値および価値に貢献するベネフィットは、定量的、定性的な用語で定義できる
プロジェクト・チームは、成果に焦点を当てることで価値の創出につながる意図したベネフィットを支援する
プロジェクト・チームは、進捗を評価し、期待された価値を最大化するために適応する
多くのプロジェクトがビジネス・ケースに基づいて立ち上げられる
ビジネス・ニーズ
プロジェクトの正統性
事業戦略
これらが明らかになり、そこにベネフィットと合意事項が加わると、プロジェクト・チームにまとまった情報がもたらされる
チームは情報に基づく意思決定ができるようになり、意図する事業価値を満たしたり、それを超えたりすることを目指す
プロジェクトによっては価値を最大限に高める多様な価値工学を用いることがある
例えば、できる限り少ない資源で、無駄を省きながら受容可能なリスク・エクスポージャーに抑えて、求められる機能と品質レベルを提供する
3.5 システムの相互作用を認識し、評価し、対応すること
プロジェうとは、相互に依存し相互に作用する活動領域のシステムである
システム思考では、プロジェクトの各部分がお互いにどのように影響しあっているのか、また外部システムとどのように影響しあっているのかを全体的に捉える
システムは絶えず変化しており、内外の状況に常に注意を払う必要がある
システムの相互作用に対応することで、プロジェクト・チームはプラスの成果を活用できる
3.6 リーダーシップを示すこと
効果的なリーダーシップはプロジェクトの成功を促進し、プラスのプロジェクト成果に貢献する プロジェクト・チーム・メンバーは誰でもリーダーシップを発揮できる
リーダーシップは権限とは異なる
効果的なリーダーはそのスタイルを状況に適応させる
効果的なリーダーは、プロジェクト・チーム・メンバー間の動機づけの違いを認識している
リーダーは、正直さ、誠実さ、倫理的な行動において望ましい行動を示す
リーダーシップと権限を混同すべきではない
プロジェクトを成功させるためには権限だけではなくリーダーシップが必要
普遍的に最善の、推奨のアプローチとして証明されたリーダーシップは一つもない
効果的なリーダーシップはそのときの状況に最も適するときに発揮される
混沌とした状況では、協働的な問題解決よりも指揮型の行動の方がより明確で物事を進めやすくなる
高い能力を持ち意欲的な要因がいる環境では、集権型の調整を行うよりも権限を与えて委任する方が、より高い生産性を引き出す
リーダーには個人の性格が重要である
リーダーシップを発揮する能力が高くても利己的または信頼出来ないと思われることで影響力が損なわれることがある
有能なリーダー
正直さ、誠実さ、倫理的な行動の分野でロール・モデルとなることを目指す
透明性を重視し、利他的に振る舞い、他社に助けを求めることができる
メンバーはリーダーを観察し手本にするということを有能なリーダーは知っている
プロジェクトはリーダー人々が何によって動機づけられるかをリーダーが理解しているときに、最もよく機能する 委譲された責任と権限に基づいて業務上の義務を果たすことができる
リーダーシップを共有することで、組織が任命したリーダーの役割や権限が弱められたり軽減されたりすることはない
また、そのリーダーが適切なリーダーシップのスタイルやスキルを適時に適用する必要性が軽減されることもない
3.7 状況に基づいてテーラリングすること
一つとして同じプロジェクトはない
プロジェクトの成功は、望ましい成果を生み出す最適な方法を判断するためにプロジェクト固有の状況へ適応することに基づく
アプローチのテーラリングは反復的であり、プロジェクト期間中に継続的に行うプロセスである
3.8 プロセスと成果物に品質を組み込むこと
品質
プロジェクトの品質には、ステークホルダーの期待を満たすこと、およびプロジェクトやプロダクトの要求事項を満たすことが含まれる
品質は成果物の受入基準を満たすことに焦点を当てる
プロジェクトの品質には、プロジェクトのプロセスをできる限り適切で効果的にすることが含まれる
3.9 複雑さに対処すること
複雑さ
複雑さは、人の振る舞い、システムの相互作用、不確かさ、および曖昧さの結果である
複雑さはプロジェクトのどの時点でも発生しうる
複雑さは、価値、スコープ、コミュニケーション、ステークホルダー、リスクに影響を与えるイベントや条件、および技術革新により生じる
プロジェクト・チームは、複雑さの要素を特定することに気を配り続け、さまざまな方法を用いて複雑さの程度や影響を減らすことができる
不確かさには、未来の未知やブラック・スワン(完全に既存の知識や経験の外にある新たな要素)が含まれる 3.10 リスク対応を最適化すること
リスク
個別リスクと全体リスクがプロジェクトに影響を与えうる
リスクはプラス(好機)であることも、マイナス(脅威)であることもある
プロジェクト全体を通して継続的にリスクに対応する
組織へのリスク態度、リスク選好、リスクしきい値は、リスクへの対応に影響を与える
リスク対応は以下の点を満たすべきである
リスクの重大さに見合う
費用対効果が高い
プロジェクト状況に照らして現実的である
関連ステークホルダーの同意を得ている
責任者が任命されている
3.11 適応力と回復力を持つこと
適応力と回復力
適応力は、変化する状況に対応する能力である
回復力は、影響を緩和する能力と、挫折や失敗から迅速に回復する能力である
アウトプットよりも成果に焦点を当てることで適応力がついてくる
プロジェクトが最初に計画したとおりに遂行されることは滅多にない
状況に対応する必要がある
適応力と回復力を支えるもの
迅速に適応する短期のフィードバック・ループ
継続的な学習と改善
必要な各スキル分野における豊富な知識を持った人々を迎えた、幅広いスキル・セットを備えたプロジェクト・チーム
改善の好機を特定するためのプロジェクト作業の定期的な検査と適応
幅広い経験を備えた多様なプロジェクト・チーム
内外のステークホルダーに関与を促すオープンで透明性の高い計画
アイデアをテストし、新たなアプローチを試すための小規模なプロトタイプと実験
新しい思考方法や作業方法を活用する能力
作業のベロシティと要求事項の安定性のバランスを取るプロセス設計
組織におけるオープンな対話
必要な各スキル領域の当該分野専門家を迎えた、幅広いスキル・セットや文化、経験を備えた多様なプロジェクト・チーム
過去の同様の取り組みまたは類似の取り組みによって学んだことに基づく
複数の潜在的なシナリオを予測し、複数の不測の事態に備える能力と意欲
先延ばしできる限界までの意思決定の延期
マネジメントのサポート
スピードと安定性のバランスを取った拡張可能な設計
3.12 想定した将来の状態を達成するために変革できるようにすること
変革
変革への体系的アプローチは、個人やグループ、組織が、現状から将来の望ましい状態へと移行する助けとなる
変革は内部的影響または外部要因から生じる
すべてのステークホルダーが変化を受け入れるわけではないため、変革を実現するのは挑戦的な課題となりうる
短期間にあまりに覆うのことを変えようとすると、変革への疲弊や抵抗を招く可能性がある
ステークホルダー・エンゲージメントや動機づけアプローチが変革を取り入れる助けとなる
プロジェクト・マネジャーは変革エージェントとして行動する
組織が変化に備えるための独自の役割を担う
プロジェクトはその定義上、なにか新しいものを生み出す
チェンジマネジメント(またはイネーブルメント)
現状から望ましいベネフィットを実現する将来の状態へと個人やグループ、組織を移行するために、繰り返し行う包括的で体系的なアプローチ