3-2. 転写機構
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1) RNA合成:RNAポリメラーゼ
RNA合成、すなわち転写(transcription)に使われる酵素はRNAポリメラーゼ(RNA polymerase: RNA pol)
原核生物の細胞は1種類の酵素しかもたないが、真核生物には少なくとも3種類の酵素(RNA pol I, RNA pol II, RNA pol III)があり、それぞれrRNA、mRNA、tRNAなどの小型RNAを合成する
転写反応ではまず酵素が遺伝子に隣接するプロモーター領域に結合する
転写開始部分のDNAが部分的に変性し、酵素が遺伝子をコードする鎖(コード鎖)の反対鎖DNA(鋳型鎖)に相補的なリボヌクレオチド三リン酸(NTP)を基質として取り込み、DNAポリメラーゼのように重合反応を続け、RNAを3'末端の方向に伸ばしていく
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ただし、RNA合成はDNA合成とは以下の点で異なる
鋳型に利用されるのはDNAの一方のみだが、酵素が作用するためには二本鎖である必要がある
プロモーターに結合した酵素は、一方方向(遺伝子の方向)に移動する
プライマーは不要である. つまり鎖合成の開始ができる
なお、遺伝子を眺めた場合、プロモーター側を遺伝子の上流、反対側を下流と呼ぶ
遺伝子上流のさらに上流の非遺伝子部分も上流という場合がある
2) 転写開始
原核生物
プロモーターには多くの遺伝子で見られる短い共通配列(コンセンサス配列)が存在し、RNAポリメラーゼ結合の目印となる
e.g. -10領域(プリブノウボックス: TATAAT), -35領域(TTGACA)
プロモーター認識にはRNAポリメラーゼ中のσ因子というタンパク質がかかわる
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σ因子を持つRNAポリメラーゼがプロモーターに結合すると、酵素のもつDNAヘリカーゼ活性でDNAが部分的に変性する(活性化状態になる)
σ因子は転写が始まるとほどなくRNAポリメラーゼ本体(ホロ酵素)から離れ、それをもたないRNAポリメラーゼ(コア酵素)に再結合する
真核生物
RNAポリメラーゼ自身ではプロモーターに結合できず、複数の基本転写因子(e.g. TF II H)の補助が必須
RNA pol II系遺伝子プロモーターの転写開始部位の約30 bp 上流には、基本転写因子のTBP(あるいはTF II D)が結合するTATA-boxとよばれるコンセンサス配列がよく見られる
3) 転写集結まで
原核生物のRNAポリメラーゼは下流に向かって転写を続け、転写終結配列(ターミネーター)の適当な部位で転写を終える
終結のために専用の因子(ρ因子)が結合する機構もある
真核生物の転写終結機構は多様
RNA pol IIは決まった転写終結点をもたず、タンパク質コード領域の下流にあるポリAシグナル(AAUAAA配列)の約30塩基下流でRNA前駆体が切断され、余分に転写された部分は分解される
Column RNAワールド仮説
RNAワールド仮説
RNAはタンパク質のような構造をとりやすく、反応性を示しやすい
事実、酵素活性をもつRNAであるリボザイムが多数見つかっている
また、RNAもDNAと同様にヌクレオチドからなる線状分子なので、遺伝情報をもつことができ、事実RNAウイルスはRNAをゲノムにもつ
以上のような事実を総合的に判断した結果、生命が誕生した頃は、多様な機能をもつRNAが、ゲノム、酵素、調節因子などのすべてを担っていたと考えられるに至った
RNAワールドは最終的にゲノム機能をDNAに、酵素/調節因子機能の大部分をタンパク質に任せ、現在のDNAワールドが創られたと推定される
RNAを鋳型にDNAを作る逆転写酵素が実在するという事実は、RNAワールド仮説を強く支持する