ホヤはなぜ大脳をつくれないのか
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刘柏岐 理学研究科博士課程学生、佐藤ゆたか 同准教授は、脊椎動物に最も近縁な無脊椎動物であり、大脳あるいは終脳に相当する脳構造を持ってないホヤの脳の前方領域に、脊椎動物の吻側神経菱と同様に、 Foxg 遺伝子が発現していることを見つけました。
脊椎動物は、その進化の過程で、脳、とりわけ大脳と呼ばれる領域を発達させ、高度な情報処理能力を獲得してきました。発生の過程で、大脳は終脳と呼ばれる構造から生じますが、終脳形成には、脳の前方に位置する吻側神経菱からのFGF分子を介した信号伝達が必要です。吻側神経菱で発現するFGF分子とそこで発現する Foxg 遺伝子は、お互いに活性化しあうループ状の遺伝子調節回路を持っています。この遺伝子回路を通じて、脳の前方領域にも Foxg 遺伝子が発現し、そこが終脳へと分化します。
FGFとFoxgが互いに活性化しあうことで終脳分化する仕組み
ホヤでは Foxg は潜在的にFGF分子による制御を受けますが、 Foxg 遺伝子はFGFシグナル分子の発現を誘導できず、ループ状の遺伝子調節回路が未完成でした。脊椎動物とホヤの祖先が分岐した後の脊椎動物の進化の過程で、 Fgf 遺伝子がFoxgによって活性化されるようになり、それが終脳の誕生につながったと考えられます。
FGF→Foxgはあるが、Foxg→FGFがない
ループが未完成
これはホヤの祖先との分岐後の進化過程で得られた
本研究成果は、2019年10月29日に、国際学術誌「Nature Communications」に掲載されました。