イリアス
古代ギリシャにおける「イリアス」(古希: Ἰλιάς, Ilias)は、古代ギリシャ文学最古にして最高の叙事詩の一つです。
具体的には、以下の点が挙げられます。
作者: 伝説的な盲目の詩人ホメロス(ホメール)によって作られたと伝えられています。(ただし、ホメロスが実在したか、一人の人物だったかについては議論があります)
内容: トロイア戦争(ギリシャ側からはイリオス戦争とも呼ばれる)の最後の年の一部、約50日間の出来事を描いています。
物語の中心は、ギリシャ軍最強の英雄**アキレウスの「怒り」**とその展開です。
総大将アガメムノンとの対立によってアキレウスが戦線を離脱するところから始まり、親友パトロクロスの死、復讐のためのアキレウスの戦線復帰、トロイアの英雄ヘクトルとの一騎打ちと討伐、そしてヘクトルの遺体の返還と葬儀までを描きます。
注意点として、「イリアス」はトロイア戦争のすべてを描いているわけではありません。 戦争の原因となったパリスの審判やヘレネの略奪、有名なトロイの木馬による落城などは、「イリアス」の後日譚や他の伝承で語られます。
形式: ダクテュロス・ヘクサメトロス(長短短六歩格)という厳格な韻律で書かれています。元々は口承で語り継がれていたと考えられています。
タイトルの意味: 「イリアス」とは「イリオス(トロイアの別名)に関する詩」という意味です。
重要性:
「オデュッセイア」と並ぶホメロスの二大叙事詩であり、西洋文学の古典中の古典とされています。
古代ギリシャ人の価値観(名誉、勇気、運命など)、宗教観(神々の人間への介入)、社会を知る上で非常に重要な文献です。
英雄たちの葛藤や人間ドラマは、後世の文学、美術、演劇などに多大な影響を与え続けています。
古代ギリシャにおいては、教育の基本テキストとしても用いられました。
簡単に言えば、「イリアス」は、トロイア戦争末期のアキレウスの活躍と葛藤を描いた、古代ギリシャを代表する壮大な英雄叙事詩です。