防衛増税
防衛費と関連経費を合わせた27年度の予算水準を22年度の国内総生産(GDP)比で2%に増額する方針を岸田が決断したのは昨年11月末。さらに12月5日には、23~27年度の防衛費の総額を43兆円規模にするよう防衛相の浜田靖一と財務相の鈴木俊一に指示した。
約48兆円を見込んだ防衛省と30兆円台半ばに抑えようとした財務省の間を取った形で、確たる根拠があるわけではなかった。
極めつきは岸田が12月8日の政府与党政策懇談会で提起した1兆円の増税方針だ。安倍が生前、防衛費増額に国債を活用すべきだと主張していたこともあって、自民党安倍派は大反発し、一時は政権の存続が危ぶまれる事態にまで発展した。 自民党政調会長の萩生田光一は政調全体会議を緊急招集。出席議員の7割は増税に反対し、萩生田が「増税するぐらいなら軽減税率をやめればいい」と発言すると大きな拍手が起こった。 消費税の軽減税率による減収額は1兆円程度とされており、これを廃止すれば増税の必要はないというわけだ。 消費税率10%への引き上げに伴って導入した経緯から公明党が容認する可能性はなく、「際どい冗談」という受け止めが大半だったが、自民党内で増税への拒否反応はそれほど強かった。
閣僚からも異論が出た。
岸田が「所得税について個人の負担が増加するような措置を取らない」との考えを示したことで法人税に注目が集まったが、経済産業相の西村康稔は記者会見で「経済界が投資と賃上げに意欲を示している。このタイミングでの増税には慎重であるべきだ」と表明。 経済安全保障担当相の高市早苗も自身のツイッターで「賃上げマインドを冷やす発言を、このタイミングで発信された総理の真意が理解できない」とかみついた。萩生田、西村、高市はいずれも安倍に近い。