脱アメリカ
トランプが執着している「世界は俺を尊敬している」という自己イメージが、ここ数日でついに崩れ始めた。今まで各国首脳はトランプを怒らせないよう表向き敬意を装ってきたが、そのメッキが剥がれてきた。
ゼレンスキーは「ロシアがまたアメリカを手玉に取った」とほぼ公言した。今まで思っていても口にしなかったことを、ついに堂々と言い出した。
スターマー英首相も「エネルギー価格がプーチンやトランプの行動で上下させられるのはうんざりだ」と発言、同一文でトランプとプーチンを並列した——これは相当思い切った踏み込みだ。「特別な関係」を何とか維持しようとしてきた人物がここまで言うのだから重い。
なぜこうなったかというと、米国がイランという四流国家と戦って負けたからだ。軍事的に強いとされていたはずの米国が情けない結果を出し、同盟国を脅したり戦争犯罪をちらつかせたりしながら、最終的には惨めな降伏に見えるものをやった。結果として、世界はもはや米国を恐れてもいないし信頼もしていない。
ウクライナ情勢も興味深い展開を見せている。トランプはプーチン側に立って米国からの援助を全部打ち切ったが、ウクライナは欧州の支援だけで踏ん張るどころか、ドローン戦争で優位に立ちつつある。ウクライナの先進的なドローン技術は中東でも注目されており、湾岸諸国がウクライナとの武器取引を模索している——「アメリカに頼れないならウクライナに聞こう」という話だ。これがゼレンスキーをより大胆な発言に駆り立てている。
信頼できる同盟国を持つことは地政学上の大きな資産だ。それをすべて失うのは大きな損失であり、回復は容易ではない。
「私はこれを喜んでいるわけじゃない。次の大統領が、完全に傷ついたブランドを引き継ぐような事態は避けてほしかった。でも、そっちの方向に進んでいる」——これは筆者(クルーグマン)自身の言葉だ。最悪で最も愚かな連中に任せた結果がこれ、という苦々しい締め括りである。
トランプ政権の理不尽な通商いじめで、世界(政府も企業も)が米国依存を減らし、“経済的離婚”に向かってる。戦後の「ルールに基づく貿易体制(米国が信頼できる番頭)」は終わりつつある。で、その帰結はアメリカ人が目に見えて貧しくなる
発端
EU(欧州連合)とインドが自由貿易協定を妥結(1/27のニュース→ブルームバーグ経由で紹介)。ウルズラ・フォン・デア・ライエンが「mother of all deals」とか煽る。盛ってるけど、象徴的にはデカい。
なぜ象徴的か
これは単なる関税の話じゃなくて、「米国が信用できない・面倒くさい・当たり屋」になったので、世界が代替ルートを作り始めたってサイン。クルーグマンはこれを“経済的離婚”と呼ぶ。
中身はわりと“ちゃんとした”貿易協定
欧州→インド:自動車やオリーブ油みたいな輸出で関税が下がる
インド→欧州:労働集約品の輸出でアクセス改善
しかも「努力目標」じゃなく、測定可能で執行可能な条項がある、と強調(=トランプの“ディール”と対比)。
トランプの“ディール”disり(ここが本編の半分)
トランプは「各国が米国に18兆ドル投資を約束した」と言うが、根拠不明。
ピーターソン国際経済研究所の試算だと公表分を積んでも約5.7兆ドル程度
さらに中身も、「煙と鏡」
2/3が湾岸産油国(そもそも米国に大投資する構造じゃない)
EUの6000億ドルも実体が薄い(vaporware扱い)
EUもインドも、米国から離れたい理由がある
EU:通商面の言いがかり、テック業界のゴリ押し、内政干渉、グリーンランド云々の脅し、等々で不信感。
インド:対米輸出に高関税(平均34.5%)。昔の米政権は対中バランスでインド重視だったのに、今はそういう“正気の外交”じゃない
政府だけじゃなく民間企業もピボットしてる
ロイター等の見出しを並べて「企業も米国外に逃げ始めてる」と補強。
「米国市場にアクセスできないと世界は死ぬ」みたいな脅しは、実は大して効かない。
米国の輸入=“世界(米国以外)のGDP”のうち何%を吸ってるか。平均で5%未満(カナダ+メキシコを除くともっと低い)。一方でEU市場はそれより重要度が高い(ほぼ倍)。データは世界銀行。