胃がん
予防
胃透視検査
バリウムで胃の表面をコーディングしてレントゲン撮影する 内視鏡検査
小型カメラで胃の中身を直接観察する
どっちがいいのか?→胃カメラ
バリウム検査は約80年前、胃がんのメカニズムが分かる以前に開発された古い検査で、日々進化する胃カメラの精度にはかなうはずもありません
最新の機材では内視鏡の直径は数ミリまで小型化されています。たしかに数十年前、登場したばかりの胃カメラは直径が数センチあり、検査は苦しいものでしたが、今では非常に小型化され苦しさはかなり緩和されています
こうした高い診断能にもかかわらず、これまで検診において胃透視検査が内視鏡検査よりも優先されてきた理由は、胃透視の方が
手軽にできて(バスによる巡回検診も可能)
かかる費用が安く
検査時間が短く、検査を行う人手も多いため(胃透視は放射線技師が主に施行、内視鏡は医師のみ)
より多くの受診者を検査することができたからです。
バリウムと胃カメラの精度の違いを知っている私たち医師がバリウム検査を受けることはまずありません。
しかし、依然としてバリウム検査は胃がん診断のための検査として行われています。
これは、端的にいえば厚生労働省が定めているがん検診の指針に、いまだバリウム検査が含まれていることが原因です
なぜそのような指針になっているのでしょうか。国のがん対策は死亡率をエビデンスとしており、そのデータがバリウム検査を受けた人のものしかないからです。「1~3年以内にバリウム検査を受けた人の死亡率が、受けなかった人に比べて60%減少した」というデータがあります(がん検診のあり方に関する検討会中間報告書~乳がん検診及び胃がん検診の検診項目等について~平成27年9月)。
特に早期の胃がんにおいては、病変がわずかな隆起や凹み、周囲の粘膜との色のちがいとしてしか認識できないことが多いため、内視鏡の方がこうした病変の指摘には断然優れています。
また、内視鏡では食道についても胃と同じ様に観察できますが、胃透視では食道はさっとバリウムが流れてしまうため、小さな病変や平坦な病変の指摘は困難です。
さらに、内視鏡では“がん”が疑われたら、その病変の組織を一部採取(生検)して、病理診断(顕微鏡診断)によって“がん”かどうかの確定診断をつけることができます。
日本対がん協会が2010年に行った胃がん検診のデータによると、受診者243万1,647人のうち精密検査が必要と判定された方は20万7,877人(8.5%)で、このうち実際に精密検査(内視鏡)を受けた方は15万4,167人(77.4%)、“がん”が発見された方は2,683人(0.11%)という結果でした。これは見方を変えると15万人以上の方が2つの検査を受けるという二度手間をかけて、実際に“がん”が見つかったのは精密検査を受けた方の2%弱という極めて効率の悪い結果と受け取れます。