生活習慣病
「生活習慣病という用語は廃止すべきだ」 東大教授がそう訴えるわけ
社会的要因があるものについても自己責任に転嫁されてしまうから
2019年の11月から糖尿病学会・糖尿病協会連名で、糖尿病を患う人々に対する偏見に対する反対キャンペーンが展開されるようになりました。
ーーしかし、糖尿病診療ど真ん中の医師ではなく、先生のような公衆衛生の研究者がこうした活動に参加した意味は何なのでしょう?
専門医は、糖尿病が遺伝や生活習慣など様々な要因が複合して発症する病気だとはわかっているのですが、個人を取り巻く社会環境が左右する「健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health、SDH)」という概念はまだ普及し始めたばかりです。
社会の問題となると、「それは病院の外の話でしょう?」「医者は関係ない」「政府がどうにかしてくれ」と蚊帳の外扱いになりやすいのです。だから私のような外様の研究者が加わったのです。
同じ健康情報を手に入れるのでも、学歴がある人は周りに簡単にそういう情報を与えてくれる仲間がいるのに、自分で努力しないと得られない人もいる。
貧困はお金だけの問題ではありません。もっと広い意味でこうした貧困が与える健康影響を考えなければいけません。政府だけが考えるべき問題ではないのです。
バーカー仮説を出すまでもなく、糖尿病になる確率や糖尿病による死亡率は、どこの国を見ても、学歴が低い人の方が高いのです。これは全世界共通です。遺伝や生活習慣の問題ではなく、もっとも強力にこの病気を左右しているのは学歴などの社会的要因なのです。