湯川・朝永宣言(1975)
「ラッセル・アインシュタイン宣言(1955)」が発表された当時は、まだ大量の核兵器は存在せず、世界平和の実現のためにその手始めとして熱核兵器の廃絶を行えばよいという考え方が成り立つ時代であった。だが遺憾ながら、その後、私たちは、核軍備競争をくいとめることができなかったばかりでなく、核戦争の危険を除去することもできていない。また種々の国際的な取決めによって、軍備管理という枠組みの中での努力と苦心が積み重ねられたけれども、その成果に見るべきものはない。 したがって、核軍備管理によって問題の解決が可能であるという期待をもつべきではないと、私たちは信ずる。そして核軍縮こそが必要であるという確信を深めざるをえない。というのは、軍備管理の基礎には核抑止による安全保障は成り立ちうるという誤った考え方がある。したがって、もし真の核軍縮の達成を目指すのであれば、私たちは、何よりも第一に核抑止という考え方を捨て、私たちの発想を根本的に転換することが必要である。