正当化のための抽象化
from 2025-06-17
正当化のための抽象化
抽象化やメタレイヤーは、現実に対して一つレイヤーが高いので説明力が高いように思える
しかし抽象化を間違うこともよくある
間違ったモデルからは間違った結論が出る
誤った二分法
抽象化構造が合っているかどうかは、現実をたくさん当てはめて評価しなければならないが、大抵の場合の抽象化は、何か具体的な問題に対してそれを抽象化して自分に有利の良い結論を出すために抽象化するものであって、論じる対象が具体的なもの回答が出るとわかっているものに対してしか当てはめが行われない。そりゃあその範囲では自分に都合の良い結論が出る。
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「結局、“努力すれば報われる”って幻想なんだよね。」
唐突に黒川が語り出す。
「また来た」と美咲は思った。「どういうこと?」
「僕の友人にさ、毎日真面目に働いてたのに、バイト先で時給ぜんぜん上がらなかった人がいるの。無遅刻無欠勤。新人に仕事も教えてた。でも、時給は1050円のまま。これ、完全に“評価の非対称性”ってやつ。」
「それって、“評価する側が独占的にルールを握ってる”って理論の話?」
「そう!これが“資本側の裁量評価支配”っていう構造なんだ。つまり、どれだけ頑張っても報酬が決まる仕組み自体が不透明で、本人の努力とは関係ない。だから報われないのは、その人のせいじゃない。構造のせいなんだよ。」
「なるほど、そのバイトの話には当てはまってるかもね。」
黒川は得意気に微笑む。
「でしょ?だから僕の理論は現実にフィットしてる。努力と報酬は比例しない。社会構造が問題なんだ。」
「じゃあさ」と美咲が言う。「うちの妹もコンビニでバイトしてたけど、発注の仕組みを改善して、店長に評価されて時給100円上がってたよ。」
黒川は言葉に詰まる。
「いや、それは…例外じゃないかな…」
「で、うちの会社のインターンも、結果出した子は契約社員になってた。努力が報われる例も普通にある。」
「う…」
「あなたが言ってる理論、報われない例に合わせて作ったんでしょ?そりゃその人にはピッタリ当てはまるだろうけど、努力が報われる例を見たときに説明できなかったら、理論としてはまだ弱いよ。」
黒川はアイスティーのストローを見つめながら黙った。
「…でもさ」と黒川が言った。
「俺、ほんとに思うんだけど、“努力は報われる”って幻想だよ。」
美咲は黙って聞いている。
「大学の同期に慎平ってやつがいたんだ。あいつ、3年間ずっと契約社員で働いてて、朝も誰より早く来て、新人のフォローもして、職場の誰より仕事できた。でも、正社員になれなかった。」
「なんで?」
「“主体性が足りない”とか言われたらしい。でもそれって、結局声がでかい奴が得する仕組みってだけだろって思った。あとから入ってきた、調子のいいやつが昇格したんだよ。」
「ふーん…それはちょっときついね。」
「でしょ?努力の結果が報酬につながるんじゃなくて、印象とか運で決まる。慎平はそれでも“自分に問題があったのかも”って言ってたけど、違うよ。あれはもう、構造の問題だ。評価の仕組みそのものが歪んでる。」
黒川は少し熱を帯びた口調で続ける。
「だから俺は、ああいう人たちが救われる理論を作りたい。ちゃんと説明できる仕組みが必要なんだ。“報われなかったのはあんたが悪い”じゃなくて、この構造が不公平だったって示せれば、少しは救われると思う。」
美咲は、黙って聞いていた。しばらくして、静かに口を開く。
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「でも黒川、それ、たぶん昔から感じてたんじゃない?」
「…は?」
「高校のときもさ。あんた、ほんとに真面目だったよ。ノートも毎回完璧、提出物も期限前に出して、先生に言われたことは絶対守ってた。でも…」
「でも?」
「先生の評価、けっこう普通だったよね。“真面目だけど、もう一歩”とか。“もう少し主体性を”とかさ。むしろ褒められてたのは、適当に発言してる男子とか、話が上手なタイプ。」
黒川は少し口元を引きつらせて笑った。
「……まぁ、そうだったかもな。」
「あんた、毎日めちゃくちゃ頑張ってた。でも、報われ方がちょっとズレてた。」
「別に、報われたいとかじゃなかったし。」
「うん。でも、それが積み重なったら、どっかで納得いかなくなると思う。で、それを言葉にしようとしてるのが、今の理論なんじゃない?」
黒川はグラスの中の氷をストローで押しながら、何も言わなかった。
その沈黙のなかに、彼自身がまだうまく説明できない引っかかりが、うっすらと漂っていた。