国民投票法
本法制定の必要性として、改憲の手続法を制定しないのは立法義務に違反する「立法不作為」であることが強調されました。しかし、改憲が日程に上ってからの急な主張であることは否めませんでした。当初、自公民3党による修正案の共同提出が目されていましたが、最終的には与党単独で提出され、強行採決されました。議員立法でありながら異例の18項目にも及ぶ付帯決議がなされたことは、多くの問題点が残されたままの見切り発車だったことを端的に物語っています。安倍晋三内閣が改憲を実行するため制定を急いだことが背景にあります。
課題
①最低投票率を定めていません。しかも憲法96条が国民投票で「過半数の賛成を必要とする」としている「過半数」の母数を有効投票総数という最も低いものとしています。これらは改憲を安易に可能とするものであり、憲法の最高法規性を軽視することになりかねません。
②国民投票は「憲法改正案」ごとに行うとしています。一括投票を認める余地もあり不明確です。
③500万人に上る公務員や教員が地位を利用して運動することを禁止していますが、漠然不明確な規定であり、憲法21条に違反する疑いがあります。
④改憲に関する有料広告が投票日の2週間前までは自由です。資金力のある者に極めて有利です。
⑤改憲の発議があってから投票日までの期間が60日~180日では周知し討議する期間として短すぎます(山内敏弘:「日本国憲法60年と改憲手続法案(国民投票法案)」、伊藤真:「憲法改正手続法1~5」)。
テレビCMや新聞広告は当然お金がかかります。15秒のスポットCM100本を全国で流すとなると1億円以上、同様に、新聞の全国紙5紙に全面広告をうつとなると1億円以上かかります。これでは、資金力のある側の意見が圧倒的に増えてしまうことが予想されます。
とくに自由民主党の改憲案では、憲法9条を変えて軍隊を持つ「普通の国」になるようにしていますから、改憲されれば軍需産業への発注が増え、武器輸出ができるようになります。そこで財界が憲法9条の改憲を全面的にバックアップしています。