厳罰化は犯罪を抑えないが、安定した所得や格差是正は犯罪を大幅に下げる
厳罰化は犯罪を抑えないが、安定した所得や格差是正は犯罪を大幅に下げる
厳罰化や警察力の強化によって治安が維持されると思っている人がいるが、私の体感では
周囲のサポートがあるかどうか
多少嫌なことがあっても総体的には居心地の良いと思えるコミュニティに組み込まれているか
安定した収入が得られるか
ある程度の自由があるかどうか
収入だけあっても自由がなければ無意味
の方がよほど効くし、定量的にもそうなる強い類推をもっている
暴力でもなんでも日常的に使えば必ず慣れるので、そもそもそれをすることが稀な状況下でなければ抑止は成立しない
犯罪をしてはいけないという規範が多くの人に刷り込まれている状態こそが治安が良い状態なのだ
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要点まとめ
刑罰の重さや取締り強化は、思われているほど犯罪を抑えない
2024年の英ウェールズ調査でも「ストップ&サーチ」は暴力を5%しか減らさず、地域連携型“フォーカスド・ディターレンス”は33%減と大差 
一般市民に実証データを提示すると「もっと罰を重く」の支持が下がる実験結果もある 
・安定した所得や格差縮小は犯罪を大幅に下げる傾向
23か国・長期パネル研究で福祉給付の手厚い国ほど犯罪発生率が低いことを確認 
収入格差が開くほど犯罪は増える――直近2024年レビューも強い正の相関を報告 
ロサンゼルス3,200世帯へ月1,000ドルを配った実証実験では、被害経験と家庭内暴力が減り、就業率・居住安定が上昇 
・居心地の良いコミュニティと「自分は守られている」感覚が抑止力
「コレクティブ・エフィカシー」(住民同士の信頼と互助)を測る多数調査で、これが高い街ほど暴力が少ない 
ミシガン3都市の参加型まちづくりプロジェクトは、治安データと住民声を組み合わせて環境改善し犯罪を減らした 
加害者と被害者・地域が対話する修復的司法は、制度への信頼を高め再犯を抑える可能性を示すレビューあり 
・暴力への“慣れ”は規範弱化に直結
若年層が暴力的メディアに繰り返し触れると、攻撃行動が「普通」と感じやすくなるとの2025年総説 
映画台詞に「殺す」等の言及が50年間で約1.7倍に増え、専門家は「暴力が日常語化」と警告 
示唆
「やられたくなければ重罰で脅す」より、①最低限食べていける所得保障、②地域で助け合う仕組み、③公平な手続きへの信頼――を整える方が統計的にも効果が大きい。
暴力が例外的であり続ける環境(目撃しない・語らない・許容しない)を保つことが、規範の内面化につながり治安を底支えする
基素.iconあなたは私の根拠を支えるデータばかり集めましたが逆の示唆はあるか?
基素.iconポジティブなデータとネガティブなデータを比較考慮すると、どれがどの程度信頼性があると言えるのか?
o3.icon「警察力を適切な場所・時間に集中させる」「最低限の経済的安全網を保障する」の両方に比較的強い実証裏付けがある。一方、「罰を重くすれば抑止になる」という主張は、現在の研究水準では最も信頼度が低い。
信頼度の目安
★☆☆=単発研究・推計モデル・シンクタンク報告など。バイアス検証が弱い
★★☆=準実験(DID・IVなど)や国際パネル、複数研究の統合だが設計が混在
★★★=多数のRCTまたは厳格な自然実験を統合したメタ解析。再現性・異質性検査あり
1. 取締り強化系
ホットスポット警備
70件超ランダム化実験をまとめた2024年メタ解析。暴力を含む通報犯罪平均17%減。
信頼度★★★ 効果は「地点限定」「周辺への転移は小~中」とされる。
警察官数(マンパワー)
英国42警察署パネルをVARで分析、警察密度1%↑で暴力-0.26%・財産-0.38%。
設計は準実験だがIV頑健検定あり。信頼度★★☆ 
職務質問・ストップ&サーチ
歩行者停止40研究メタ解析で犯罪-13%だが住民不信を同時に増大。
研究の質にばらつき。信頼度★★☆
「デフンド」自然実験
15都市で取締り-40%→殺人急増し、再活性化後-39%。報告は法執行系シンクタンク。
選択バイアスが大きく、信頼度★☆☆
2. 重罰(量刑強化)
52研究メタ解析を再点検した全米学術報告(NRC)―「抑止証拠は不十分」。
大半が観察研究で因果推定に欠陥。信頼度★☆☆(効果否定側も同水準)
三振法(3ストライク)
推計結果が時期・手法で割れ、抑止より「収監による隔離効果」が主との整理。
定説なし、信頼度★☆☆
3. 社会資源・所得保障系
現金給付と暴力
LMICを中心に14RCTを含む2024年システマティックレビュー。身体暴力-4pt等の小幅減。
設計がRCT主体で外的妥当性は地域限定。信頼度★★★
福祉給付の手厚さ
18か国1990-2011の分解パネル研究。失業給付の寛大さ↑で殺人率が有意に減少。
モデル頑健検定済みだが観察データ。信頼度★★☆
Universal Basic Income(OpenResearch RCT, 2024)
月1000ドル×3年・N=1,000と対照N=2,000。初期に精神的ストレス・生活不安減、犯罪影響は統計的に不明。
方法は厳格だが期間と対象が限定。信頼度★★★(効果の大きさは未確定)
4. コミュニティ・規範系
・コレクティブ・エフィカシー(住民相互の信頼と統制)
観察・縦断混在37研究メタ解析。高い地区は暴力が中程度少ない(標準化d≈-0.23)。
因果方向が議論中で信頼度★★☆
統合評価
エビデンスがもっとも堅牢なのはホットスポット警備と現金給付RCT。どちらも効果は「限定的だが確実」で信頼度★★★。
警察マンパワーや福祉の厚さは因果推定手法が準実験レベルのため信頼度★★☆。方向は概ね「警察↑犯罪↓」「福祉↑犯罪↓」。
重罰強化については肯定・否定ともに観察研究止まりで信頼度★☆☆。抑止効果が明確だとは言えない。
コミュニティの居心地(コレクティブ・エフィカシー)は犯罪と強い相関を示すが、介入で高めて犯罪を減らせるかはまだ中程度の裏付け。