伝統
やはり共感を得るにはすごく時間がかかるのでしょう。社会、階級、文化、それぞれのレヴェルで難しさがあります。私はタイ古典舞踊を学んだ者のなかで初めての試みをしているわけですが、舞踊学校では学んだことがありません。タイでは古典舞踊の先生といえば、普通は国立演劇舞踊学校の卒業生ですから、そういう伝統的な学校を出ていない私のような存在は異例なのです。それゆえ私がつくっているものはすべて芸術局には認められていません。異端児と見なされているのです。
――タイの古典舞踊に親しんでいる人たちには、新たな作品はどう受け取られていますか?
ピチェ:彼らにとっては、古典舞踊の様式や考え方は変えてはいけないものです。だから私のやっていることに評価を下す時には、「これは<文化>とは違うから」と、その一点張りです。理論も知識も関係なく、ただ「文化」であるか否か、それだけなのです。タイ舞踊を、舞踊芸術としてではなく、「文化」として見ている。だから伝統的な様式から少しでも外れると「違う!」となるわけですね。