ミャンマー
日本はミャンマーに対する最大の援助国で、2019年度はヤンゴンとマンダレーを結ぶ鉄道やヤンゴンの下水道などの大型インフラ事業を含め1893億円の供与が決まった。累計でいえば、有償、無償、技術協力合わせて2兆円近い支出をしている。
2011年の民政移管後に増加が著しく、5000億円にのぼる過去の延滞債権も放棄した。債権放棄は民主化の進展が前提条件だったはずだが、国軍の暴挙で日本国民の善意が完膚なきまでに蔑ろにされている
日本政府が国軍に明確な措置を取らない理由は見当たらない。
あるとすれば、一部関係者の利害にからむものではないのか。国軍とのパイプをつなぐことにより、現地で活動がしやすくなる一部政治家や外交関係者、企業などへの配慮である。
東南アジアの人々が寄せてくれる親日感情や日本へのあこがれは、多くの日本企業、従業員らが積み重ねてきた製品づくりや職業倫理への評価、アニメなどのソフトパワーを含む民間の努力によって培われてきた結果だ。ODAや援助団体の活動などの意味もあった。いずれにせよ日本国民が長年かけて築いた財産だ。
それが一部関係者の利益を優先させる日本政府のあいまいな姿勢や不作為によって毀損され、失望が広がるとすれば、日本の将来にとって大きな損失である。
柴田 直治 : 近畿大学教授