コンテナ物語
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副題:世界を変えたのは「箱」の発明だった 増補改訂版
2019
マルク・レビンソン (著), 村井 章子 (翻訳)
20世紀最大の発明品の1つといわれるのがコンテナ。コンテナの海上輸送が始まったのは1956年3月のことだ。アメリカの陸運業者マルコム・マクリーン(引用者注:Malcolm Purcell McLean)は、コスト削減と交通渋滞回避のため運賃の安い沿岸航路に目をつけ、トラックから「箱」だけ切り離して船に載せるアイデアを思いつく。陸上、海上輸送の兼業を禁止する規制当局と戦い、さらには埠頭を牛耳る沖仲仕 の組合の抵抗を押さえ、1956年3月、コンテナの海上輸送が世界で初めて実現する。 天性の企業家マクリーンは次々に船会社を買収し、ベトナム戦争では軍事物資の輸送に食い込み、世界最大級の海運業者に飛躍する。 日本、韓国、シンガポールなどアジアの国々は、巨大なコンテナ専用埠頭を設置し、欧米との貿易で巨額な黒字を溜め込み、世界経済への影響力を増していく。グローバルな経済の成り立ちを「箱」に焦点を当てて振り返ったノンフィクション。
なお筆者は2007年の初版を元にこの書評を書いている
この変革の対象は、船舶、船会社、港湾設備、港湾労働者、労働組合、規制当局、標準化団体、トラック運送会社、鉄道会社、そしてそもそもの積荷を生産する生産者まで多岐にわたる。これらの組織が「コンテナに最適化する(同書では「コンテナリゼージョン」と呼んでいる)」ことで、国際物流は1950年代の数百分の一のコストで世界中にモノを運べるようになったのである。
同書では、コンテナが物流に及ぼす影響があまりに広範囲かつ甚大であるため、全体像や将来像を見誤る専門家や当事者がたくさん登場する
無駄に終わった港湾の設備更新(公共事業として税金が投入された)
燃費効率を度外視した最新鋭船舶(オイルショックで運行すればするほど赤字となる)
雇用補償に固執し続けたために、港湾自体から積荷がなくなってしまった港湾労働者の組合
荷役を独占していた港湾労働者の組合は、コンテナの導入による効率化によって職が減ることに抵抗し、コンテナ対応のための新たな設備投資に反対し続ける。その結果、海運会社は労働組合の力が弱い港に荷役を移さざるを得なくなってしまう。
コンテナ物流にとって不利な旧来型の水深が浅い港湾は、自分達のビジネスの持続的イノベーションの改善(例えば積荷を引き上げる埠頭のクレーンの増強とか)にとらわれ、大型船が横付けできる大深度のバースを整備した新興の港湾にとって変わられる。