アメリカメディアの萎縮
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この3社が「屈服した」と批判されている
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メディア 親会社 内容
Washington Post Jeff Bezos ハリス支持社説を直前で差し止め
CBS News Paramount → Skydance(Ellison家) 訴訟和解 + 買収でトランプ系オーナーに ABC News Disney(Bob Iger) 名誉毀損訴訟に対し1600万ドルで和解・謝罪
共通するのは「法的に勝てる見込みがあっても戦わずに屈した」という点で、業界内では「これがメディアの萎縮(chilling effect)の始まりだ」という危機感が広がっています。
流れ:
2024年選挙直前、ポストが長年続けてきた大統領候補への推薦社説の慣行を突然廃止。ハリス支持の社説を予定していたが、ベゾスが直前に差し止め
理由として「メディアへの不信感を払拭するため」と説明したが、批判的な記者・編集委員が相次いで辞職
背景にあるとされるのが利益相反:Amazonは連邦政府・国防省との巨額クラウド契約(数百億ドル規模)を抱えており、トランプとの関係悪化を避けたいインセンティブがある
Bezosは、トランプとの主要ビジネス上の関係から見て、明らかに懐柔策に出たとみられている
その後、ポストはAI企業への事業転換方針も示し、従来の調査報道路線から大きく舵を切った。
こちらは買収という明確な形での権力移行。
流れ:
1. CBSの親会社Paramountが経営難に陥り売却先を探す
3. Ellisonはトランプと友好的な関係を持つ富豪。David Ellisonはすぐにネットワークへの視聴者からの苦情を審査する保守系オンブズマンを任命し、CBSにトランプ寄りの姿勢をとらせ始めた
4. さらに、保守系ニュースサイト「The Free Press」のオーナーBari WeissをCBS News編集長候補として交渉中と報じられた
5. 訴訟圧力も作用:トランプは60 Minutesのハリスインタビューの編集をめぐり160億ドル(約2.3兆円)規模の訴訟を起こし、旧オーナー(シャリ・レッドストーン)は売却交渉と並行してトランプ側に1600万ドルで和解
共通する構造
どちらも「直接買収」より利益誘導と法的脅迫の組み合わせが効いている。
トランプ政権はFCC(連邦通信委員会)やFTC・司法省の承認権限でメディア企業の合併・免許更新を左右できる
巨大テック・メディア企業のオーナーは政府規制リスクを抱えており、トランプとの関係悪化を避けるために自主的に内容を変える構図
ベゾスはワシントン・ポストでトランプを怒らせかねない視点を排除する方向に動き、ザッカーバーグはFacebookをMAGAに友好的にし、マスクはXを極右政治の乗り物に変えた
これは法律上の「検閲」ではなく、経済的インセンティブによるメディアの自主的な右旋回——というのが多くのメディア批評家の見方です。
発端:George Stephanopoulosの発言
2024年3月、ABCの看板キャスターGeorge Stephanopoulosが番組「This Week」でNancy Mace議員にインタビューした際、トランプについて「rape(レイプ)で有罪判定を受けた」と繰り返し発言。
実際の法的事実は少し違って、E. Jean Carroll訴訟でトランプが認定されたのはニューヨーク州法上の「sexual abuse(性的虐待)」であって、"rape"という法的定義には当てはまらなかった。些細な区別に見えるが、法的には重要な違い。
トランプが名誉毀損で提訴 → Disneyが和解
2024年12月14日、ABC Newsはトランプに1500万ドルを将来の大統領記念図書館に寄付し、さらに弁護士費用100万ドルを払う形で和解。加えてStephanopoulosが「遺憾の意」の声明を発表。
法律の専門家の多くは「ABCが戦えば勝てた案件」と口を揃えた。憲法学者は「ABC側には非常に強い法的・憲法的防御があった」と述べ、和解は「ジャーナリズム全体に波及効果を与え、トランプにさらなる訴訟の青信号を与えた」と指摘した。
なぜ和解したか
ディズニーは映画・テーマパーク・グッズなど巨大なブランドを抱えており、トランプを支持する7700万人の有権者に向けてトランプが公の場で攻撃し続ける事態を避けたかった、というのが有力な見方。
その後の連鎖反応
和解が「悪い前例」になったことはトランプ自身が証明した。Jimmy Kimmelの番組がトランプ批判的な発言をした後、FCCが圧力をかけ、ABCは番組を一時停止。トランプは「前回ABCから1600万ドルもらった、今回はもっと取れそうだ」とSNSに投稿した。 これを受けて元ABC記者100人以上がRobert A. Iger宛に公開書簡を送り、「16百万ドルの和解がトランプ政権によるメディア圧力をさらに強めた」と批判し、屈服しないよう訴えた。 大前提:メディアはいまヤバい(Sullivan・Krugman共通認識) トランプ第二期も1年が経とうとしているが、主要メディアはビビりまくるか、金持ちオーナーの顔色を伺うか、どっちかになりつつある。長年メディア批評をやっているMargaret Sullivanとの対談で、その実態を確認した。
NYタイムズのマムダニ報道は意味不明だった(Sullivan) ニューヨーク市長に当選した民主社会主義者のマムダニ(34歳)を、タイムズはじめ既存メディアは徹底的に気持ち悪がった。コロンビア大学の入学申請書でのエスニシティ記載を「スキャンダル」扱いするとか、大統領選挙は社説で推薦するのに市長選挙は推薦しないとか、やってることが逆。右翼メディアは「コミュニスト!」と発狂、ニューヨーク・ポストはハンマーと鎌を持ったマムダニのコラージュ画像を1面に。笑える部類の狂騒ではあるが、「由緒正しき」既存メディアの反応の方が問題だとSullivanは指摘する。 「No kings day 2025」デモをタイムズが完全スルー(Sullivan) 全米で600〜700万人が参加した史上最大級の抗議行動を、タイムズは日曜1面でベロ(最も目立つ場所)ではなく小さな写真2枚をA面内側に掲載するだけで終わらせた。「日曜1面は独自スクープだけ」というタイムズの言い訳は苦しい。ローカル紙はトップ扱いしたのに。 ワシントン・ポストはもう終わってる(社説ページは)(Sullivan・Krugman) Sullivanによれば、Jeff Bezosがカマラ・ハリス支持の社説を差し止めたあたりから購読者が30万人以上逃げ出した。その後「トランプのボールルーム擁護」社説を掲載し、しかもベゾスのAmazonがそのボールルームの建設費に出資していた事実を最初は書かなかった。Krugmanも「ポストの社説・意見面は右に転向した」と同意。ニュース部門はまだマシとSullivanは一応フォローしている。 カネ持ちがメディアを支配する構造になってきた(Sullivan・Krugman) Krugmanが「有力メディアの多くが事実上億万長者の所有物になり、個人的利益のために使われている」と指摘。Sullivanも「ザッカーバーグ、ベゾスらがトランプ政権に擦り寄るのは商業的・個人的な利益のためで、隠しようがない」と補足。ABCやCBSの親会社がトランプの訴訟に即座に示談したことも同じ文脈。かつては「名誉ある振る舞い」という暗黙のルールがあったが、もうそれが通用しないとSullivanは嘆く。
選挙報道の歪み:共和党勝利は「時代の変化」、民主党勝利は「まあそういうこともある」(Krugman・Sullivan) Krugmanが指摘:バージニア州知事選でスパンバーガー(民主)が15ポイント差で圧勝したのに、4年前に1.5ポイント差で勝ったヤンキンの勝利より「重要性が低い」と言うメディアがいた。ニュージャージー州知事選も「大接戦」と煽り続けたが結果は13ポイント差。Sullivanはこれを「接戦にした方が視聴率が取れるという商業的動機」と分析し、「パフォーマティブな中立性(performative neutrality)」と呼ぶ。
「バイデンの嘘とトランプの嘘は同じ」論は嘘(Krugman) Krugmanが強調:バイデン政権は「インフレ率が下がった、実質賃金が上がった」という事実を伝えようとして伝え方が下手だっただけ。トランプは「食料品の値段が下がった」という完全な嘘を言い続けている。両者を「どっちもどっち」と扱うのはジャーナリズムではない。Sullivanも「バイデンの誠実さは際立っていた」と同意する。
ローカルニュースの壊滅が根本問題(Sullivan) 各地の地方紙は広告収入消滅で壊滅的な打撃を受け、かつて記者200人いた新聞社が50人以下になった例がざら。地域の共通現実感覚を担ってきたローカルメディアが消えると、人々はタコつぼ化しSNSの情報だけを信じるようになる。公的支援という解決策は理論上は正しいが、いまのアメリカでは政治的に不可能とKrugmanとSullivanは悲観的に同意する。
それでもジャーナリズムは死んでいない(Sullivan・Krugman) Sullivanは「まだ重要で質の高い報道は行われている、支援する価値がある」と強調。Krugmanも「タイムズはトランプの訴訟に屈せず戦っている」「自分のSubstack収入を主要紙の購読に充てている」と述べ、質の高いメディアを購読・支援することが読者にできる最も直接的なことだと締める。