やわらかな遺伝子
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2004(👆は2014の文庫化)
原著 Nature via Nature
翻訳 斉藤 隆央, 中村 桂子
ゲノム解析が進むにつれ、明らかになってきた遺伝子のはたらき。それは身体や脳を作る命令を出すが、環境に反応してスイッチをオン/オフし、すぐに作ったものを改造しはじめる柔軟な装置だった。遺伝子は何かを制約するものではなく、可能にするものだったのだ。私たちを形成するのは「生まれか育ちか」――長年の論争に、最新及び過去の膨大な研究データを用いてまったく新しい考え方を示した世界的ベストセラー。 ヒトゲノムの解読から、人は3万個の遺伝子からできていることがわかった。これでどうして人が「設計」できるのだろうか?愛、知能、性格、行動をめぐる人と動物のゲノム解析の新事実から、遺伝子が何をしているかがわかってきた。遺伝子は身体や脳を作る命令は出すが、すぐに経験によって作ったものを改造していたのだ。「生まれか育ちか」の二項対立の図式は誤っていた。「遺伝対環境」の時代は終りを告げたのだ。20世紀の遺伝決定論と環境決定論の悪夢(ナチズムと社会主義)を断ち切り、ゲノム時代の新しい人間観を樹立する。
「 人間の本性は「氏か育ち」かは、古くて新しいテーマである。そして、二〇〇一年にヒトゲノムの解読が完了したことで、この論争は新たな段階を迎えた。人の遺伝子の総数はおよそ三万~五万という驚きの数値(予想外に少ない!)が弾き出されたことで、人間の多様性を説明するうえで、この数で十分か不十分かをめぐる論争が新たに勃発したのだ。十分ならば氏派が有利、不十分ならば育ち派が有利となりうる。そこで登場したのが、英国の名うてのサイエンスライターによる本書である。 遺伝子は、状況に応じてスイッチを切り替える。また、別の遺伝子の作用を制御する遺伝子もある。そうした、「環境」に対応した柔軟(やわらか)で複層的なはたらきを勘案すれば、三万個でも十分。かくして「氏か育ちか(Nature vs Nurture)」の構図は、「育ちを加味した氏(Nature via Nurture)」として解決できるという。さらに著者は、遺伝子と環境が織りなすダイナミックなシステム「ゲノム組織化装置GOD」なる概念も提案している。
ときに大胆な推論や断定もあるが、ひるむことなく(ただし研究成果に則しつつ)自説を展開する態度は、サイエンスライターとしての矜持を感じさせる。」
目次
プロローグ 十二人のひげづら男
第1章 動物たちの鑑
第2章 幾多の本能
第3章 語呂のいい便利な言葉
第4章 狂気と原因
第5章 第四の次元の遺伝子
第6章 形成期
第7章 学習
第8章 文化の難題
第9章 「遺伝子」の七つの意味
第10章 逆説的な教訓
エピローグ 麦わら人形