「自社株買いで期中平均株式数が減るからEPSが高まる」は誤り
「自社株買いで期中平均株式数が減るからEPSが高まる」とする説明がある
ロジック
期中平均株式数=発行済株式数-自社株
だから自己株式を取得すればEPSが上がる
この動画以外でもググるとこういった説明は多く出てくる
純資産総額が同じでも、自社株買いによって発行済み株式数が減れば、1株当たり純資産は増加する
日本経済新聞社編集委員 前田 昌孝
【3】発行済み株式総数の2%相当の自社株を買うと、発行済み株式総数が2%減るので、利益総額が変わらなくても、1株当たり利益が約2%増える。PER(株価収益率)評価が変わらなければ、株価が理論上約2%上昇する。
自社株を買うと、発行済み株式数が減ります。会社の利益総額が変わらなければ、1株当たり利益が増えます。1株当たりの利益が増えることを好感して株価水準が高くなる...ことが期待されます。
企業を分割したものが「株式」であり、自己株式取得を行うと、企業全体の利益はそのままで株数が少なくなり、1株あたりの利益(EPS)が大きくなります。
勘違いである理由
会計上でも自社株買いをした時点で自己資本は減りますので、消却前後で(引用者注: 1株あたりの)株主価値は不変です。したがって、EPSや資本利益率にも直接的な影響はありません。 直感的な理解
https://gyazo.com/ab8405b8fe8db41ab7eb27432aa84efb
自社株買いをするときにキャッシュがへるので企業価値が減り、その分の株主価値が減る
自己株式の取得によって事業価値・有利子負債は不変
しかし買った分の株式も減少するのでEPSは変わらない
斎藤 忠久
自社株買いによって株式数が減少し、この結果、1株あたりの当期純利益(EPS)が増加することから株価が上昇するという説明をよく聞くが、上記のようにファイナンス理論から見るとそのようにはならない。
理論的には、自社株買いを行うと、利益成長率に変化がない限り、EPSは増加しても、同時にPERが低下し、株価は変化しないということになる。
株式配当モデルにそって考えると、PERは「(株主の期待利回り―当期純利益の増加率)の逆数」(PER = 1/(rE – g)」*1となる。自社株買いを行うと株式時価総額に対する有利子負債額の比率(これをD/E比率とか時価レバレッジと呼ぶ)が上昇し、株主が負担するリスクが大きくなるため、株主の期待利回りrEも上昇する。 それはどこから言えるの?
当期純利益の成長率gに変化がないとすれば、PERの式から言って株主の期待利回りの上昇によってPERは低下することになる
Q. では自社株買いで株価が上がるのはなぜ?
A. 割安な時に買っている(あるいは買うことで理論価格より安いと主張でき、市場がそれに同意する)
企業価値という視点から考えると、必ずしも株価が上昇するとは言えません。具体的に考えてみましょう。
理論価格より市場価格が安いときに買えば理論価値は上がるが、高い時に買うなら価値は下がる
通常、割高な株を買って株主価値を毀損しないので、割安だと考えているシグナルになる基素.icon
経済合理性で考えれば、自社株を消却する意味はありません。
保有する金庫株を消却すると、自社株を再放出する(売り出す)懸念がなくなるため、株主還元の強化につながると言う人もいます。しかし、実際には金庫株を再放出する場合と、消却した後に新株を発行するのでは、違いはありません。
自社株を消却しないで持ち続けることは再放出する可能性があると、勝手に投資家が思っているために、消却することが株主還元の強化になると言われているだけです。
したがって、将来の資金調達の可能性に備えるという意味では、金庫株で持ち続ける方が良いといえます。
会計上でも自社株買いをした時点で自己資本は減りますので、消却前後で株主価値は不変です。したがって、EPSや資本利益率にも直接的な影響はありません。
短期的な需給には関係するのでトレーダーが気にするのだと思う基素.icon
自社株買いを終了したANYCOLOR報告を受けて6%ダウンした