Serendipity
素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。 私たちは、ナレッジベースに対して探索的行動をとることがよくある
沙村:(笑)。俺はデジタル環境が整っていなくて。常に世間から数年遅れるんですよ。インターネット全盛期だった頃にガラケーすら持っていなかったんですね。世間が何を思っているか知らなかったんです。毎月講談社に泊まりがけでネームをきりに行っている時があって、その時『週刊現代』がゴミ箱に捨ててあって、それを毎月拾っていたんです。『週刊現代』が、俺と世間をつないでいる時期があったんですね(笑)。ちょうど俺がデビューした1993年が国際先住民年で。「先住民について慮ろう」という…。日本で言うアイヌですね。関連する本が沢山出ていて、よく記事にも取り上げられていたんです。大学の時からアイヌが好きだったので、その記事を切り抜いていまして。
読み返すと、記事の裏に全く関係ない記事が載っていたりするんです。そこに漫画でも描いた、ほうれん草と豚の遺伝子を組み合わせた「ホウレンソウ豚」を見つけて。なぜ試みたんだ?と気になったんですね(笑)。太田出版で女子高生を取り上げた作品を描く時に何かネタは無いかなと思って、この「ホウレンソウ豚」を使いました。
藤本:いいな、僕もそういうふうになりたいです。インターネットって調べたいものしか調べられないじゃないですか。ホラーが好きなのでホラーに関することをつい調べてしまうんですけど、全然必要ないんですよ。横道に逸れないと広がっていかないじゃないですか。
沙村:今で言う“まとめサイト”を見ると、いろんな記事の見出しがバーッと出てきたりするじゃないですか。自発的に探しに行っているネタ以外の見出しも出てきますから、できないことないんじゃないですかね。
藤本:興味がないことも流れてくるのでラジオを聴いているんですが、「最近この言葉みんなよく言っているな」と思ってアンテナを張っておこうとするんです。だけど漫画を描いてると何にも聞こえてこなくて。でもお話し聞いて、僕もそうあるべきだなと思いました。 沙村:今描いている漫画に本当に関係ないことだとスルーしちゃいますよね。それでも雑多に情報を得られるようでしたら得たほうがいいんですけど…。自分が将来描くかもしれないなって思うようなことっていうのは、仕事中でもしっかり聞いてたりするんですよ。素通りしているようでも、覚えている時は覚えていますしね。