RTでも公共の利益にならなければ名誉毀損になる
平成26年12月24日の東京地裁判決
「ポスター破りに唾かけ、車破壊、名誉毀損、業務妨害、証拠隠滅・犯人隠避、ストーカー、強姦、強制猥褻、不正アクセス、詐欺、恐喝、集団暴行、飲酒運転etc…お前らはこんだけやらかしてるんだから、無傷でいられるわけないでしょ」などという他人の投稿をリツイートしたことが、法的問題に当たるかどうかが争点となりました。
裁判所の判断
このツイート自体について、多数の犯罪をしたことなどを示していて、侮辱し社会的評価を低下させるため、名誉毀損に当たると判断しました。
リツイートした人の「自身が発信したものではない」という反論に対し、裁判所は、リツイートについて「ツイートをそのまま自身のツイッターに掲載する点で、自身の発言と同様に扱われるものであり、リツイートした人の発言行為とみるべき」と示しました。
平成27年11月25日の東京地裁判決
リツイートについて「既存の文章を引用形式により発信する主体的な表現行為としての性質を有するといえる」
「本件ツイート等の名誉毀損性の有無を判断するに際しては、リツイートに係る部分をも判断対象に含めるのが相当」
令和元年9月12日の大阪地裁判決
ジャーナリストの岩上安身さんが、大阪府知事時代の橋下徹さんについて書かれた「20歳以上年上の大阪府の幹部たちに随分と生意気な口をきき、自殺にまで追い込んだことを忘れたのか!恥を知れ!」といった他人の投稿をリツイートしたことが、名誉毀損に当たるかどうかが争点となりました。
裁判所の判断
元ツイートを批判したり議論を喚起する目的でリツイートする場合、「何もコメントをつけないで元ツイートをそのまま引用することは考え難く、投稿者の立場が元ツイートの投稿者とは異なることなどを明らかにするべく、当該元ツイートに対する批判的ないし中立的なコメントを付すことが通常である」と指摘しました。
その上で、コメントをつけずに引用するリツイートは、一般の閲読者の読み方を基準とすれば、前後のツイート内容からリツイートの意図が読み取れる場合などをのぞいて、「リツイートの投稿者が、自身のフォロワーに対し、当該元ツイートの内容に賛同する意思を示して行う表現行為と解するのが相当」と示しました。
基素.icon そういう人が多いかもしれないがそういう判断を一律にされるのは不服である。少なくとも自分の観測範囲や自分自身が、賛同するわけではないがRTをすることがあることを知っている
岩上側の主張もこのようなことをいっているが認められていない
拡散の目的には「元ツイートの内容に賛同する意思表示の場合もあれば、内容に批判的であるからこそ紹介する場合、リツイートをした者の単なる備忘録的な目的の場合など、様々な場合がある」とし、「情報提供の趣旨でリツイートしたに過ぎないから投稿の行為主体とみることはできない」と反論しました。
名誉毀損になったということは公益性も認められていないということだろう
高裁に控訴棄却されてる
西川知一郎裁判長は岩上氏に33万円の支払いを命じた一審・大阪地裁判決を支持し、岩上氏側の控訴を棄却した。
中澤弁護士の見解
「裁判所の考え方も定まった部分がない領域で、ケースバイケースの判断になっているのが現状です。私個人の見解としても、リツイートだからセーフ、リツイートでも違法ということではなく、リツイートか否かは、法的判断に決定的な 影響を与える要素ではないと考えています」
リツイート対象のツイートの内容を基礎に、前後のタイムラインの流れなども加味して、これをリツイートすることはどういう意味かということを外形的に判断してゆくべきだと思います。
■北村弁護士の見解
はい、これは名誉毀損になります。
実名で部長の浮気を公表するという行為、これは中身が本当でも嘘でも、原則名誉毀損になります。社会的評価を下げますからね。本件はその内容をリツイートしたんですね。
本当でも名誉毀損になるんだなあ
実は、刑法230条1項には、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」とあり、基本的には書き込まれた内容が真実であるか否かを問わず、名誉毀損罪が成立します。真実だからといって何でも書いていい、ということにはならないのです(ただし、死者に対する名誉毀損は、虚偽の事実を摘示した場合に限って処罰されます〔同条2項〕)。 死人はOK
もっとも、たとえ人の社会的評価を低下させるようなことであっても、公共の利益のために世間に伝えるべきこともあるでしょう。報道や告発は、ときに犯罪や問題を明るみに出します。
そこで、次の条件を満たした場合は、処罰されないものとされています(刑法230条の2第1項)。
〈1〉公共の利害に関する事実についての意見や論評であること
〈2〉意見や論評の表明の目的が専ら公益を図ることにあること
〈3〉意見や論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があること
ここで注意しなくてはいけないのは、〈3〉の「事実が真実かどうか」が焦点だということです。「○○という噂がある」という書き込みをした場合も、通常、「噂が本当に存在するか」ではなく、「噂の内容が真実か」についての判断が行われます(昭和43年1月18日最高裁決定)。
平成26年、平成27年、民事の判決ですけどもいずれも名誉毀損に当たるという東京地裁の判例が出てます。