2026-07-03
トランプ、自分でまとめたはずのUSMCAをあっさり更新拒否。北米内無関税というNAFTA以来の建前が揺らぎ始めた。 「どうせ次の大統領が元に戻すだけ」と軽く見る向きもあるが、それは論点がずれている。NAFTA以前から対メキシコ関税はもともと平均2%程度と低く、NAFTAの価値は関税撤廃そのものより「何年も安心してサプライチェーンを組める」という予見可能性にあった。約束を平気で破る大統領がいる時点で、その予見可能性はもう幻想。
以下、Bloombergのインタビュー部分より。
司会のWestin:デトロイトとウィンザーをまたぐ自動車産業はNAFTA以来ずっと北米統合の象徴で、新設のゴーディ・ハウ橋の開通さえトランプが保留にしている。
クルーグマン:あの二都市は実質一つの街に線が引かれているだけで、往来による分業は双方に利益をもたらしている。
部品メーカーLinamarのCEOジャレル:自社製品は米・加・墨を何度も行き来してようやく完成する仕組みで、「オムレツは元に戻せない」のが実情。
CFRのオニール:強いのは「米国の自動車産業」ではなく「北米の自動車産業」であり、USMCA抜きで今の生産規模が実現できたかは疑わしい。無理に自国生産へ戻せば車は高く非力になるだけ。
クルーグマン:製造業の雇用減少をNAFTAやUSMCAのせいにするのは無理筋で、閉じこもれば雇用が増えるという発想自体がまず間違っている。
クルーグマン:本当に警戒すべきは中国で、メキシコ・カナダ経由の迂回輸出(トランスシップメント)問題こそ交渉の核心であり、対中「北米要塞」を築く方向では関係者の意見が概ね一致している。
クルーグマン:相互依存が武器として使われる時代になった以上、戦略物資は自国か信頼できる同盟国内で確保する必要があり、対中自動車への条件付き関税は必要だという立場に転じたし、長年自由貿易を唱えてきた同業者たちも同様に考えを変えつつある。
クルーグマン:何より大事なのは予見可能性で、カナダ・メキシコへの関税を毎年見直すくらいなら、いっそ高めの関税を固定してくれた方がまだましなくらいだ。
クルーグマン:トランプへの助言があるとすれば、USMCAにはそもそも揉める要素などない。カナダ産アルミへの依存を恐れる必要もなく、メキシコの自動車生産も北米システムの一部として米国の競争力を高めている。むしろ本来の自由貿易の趣旨に立ち返り、EUのような関税同盟にまで踏み込んでもいいくらいだ。
クルーグマン:中国問題は本物だが、メキシコ・カナダをめぐる問題は大統領の頭の中だけに存在する。