2026-05-18
北京で米中首脳が会談した。習近平は「トゥキディデスの罠を越えて新しい大国関係を築けるか」みたいな歴史哲学的なことを言ったのに対し、トランプは「アメリカの中華料理屋の数は大手ファストフード5社の合計より多い」とかいうどうでもいい話をした。アメリカが「マジメな国」だった時代を覚えてる身としては情けない限り、というのがクルーグマンの嘆き。 「ツキディデスの罠」というのは、衰退する大国と台頭する大国がぶつかると戦争になりやすい、という古代ギリシャ史家由来の理論。つまり習はやんわりと「アメリカは衰退国ですよね」と当てこすってきたわけ。
それを誰かに説明されたらしいトランプは、Truth Socialで「習が言ってる衰退ってのは『眠いジョー』バイデンの話で、今のオレ様政権下では世界一ホットな国になってる」と返した。クルーグマン曰く、現実はその真逆。
中国の言論界ではトランプ第二期下でむしろ「アメリカ衰退論」が強まっている。人民大学系のシンクタンクは1月に「Thank Trump」というふざけたタイトルの報告書まで出して、関税・同盟国攻撃・反移民政策・建制派叩きが結果的に中国を強化したと喜んでいる。しかもこれはイラン関連の大失態より前の話だ。
では衰退するアメリカは台頭する中国に襲いかかるのか? 現政権では無理、少なくとも有効な形では無理、というのが筆者の見立て。
バイデン政権は曲がりなりにも中国の技術・産業攻勢に対抗していた。CHIPS法は半導体で対抗するためのものだし、IRAは再エネ・電動化分野で中国の優位を切り崩す狙いだった。ところがトランプはこの産業政策をさっさと潰し、結果として製造業の建設投資はガタ落ち、とクルーグマンは指摘。
代わりにトランプが持ち出したのが「ディール」。北京訪問のファクトシートでは「画期的な合意パッケージ」と自画自賛しているが、中身は中国が年170億ドル分の米農産物を買う約束+大豆追加購入くらい。しかもトランプ第一期にも同じ約束をして全然守らなかった前科つき。仮に今回守ったとしても既存の対中輸出と比べれば「小さな大豆の山」程度のものだ、というのが結論。
要するに、いま世界は「台頭する超大国vs衰退する超大国」の構図にはなっていない。なぜなら衰退側のリーダーが、大国を大国たらしめるものを理解せず、トリビアにすぐ気を取られ、私腹を肥やすことと自己顕示にしか興味がなく、しかも自分をイエス・キリストみたいに妄想しているからだ。古代の比喩でいうならカリギュラ帝下のローマだが、カリギュラのほうがまだ被害は少なかったぞ、と最後に皮肉って終わり。