2026-04-05
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2026-04-04 "Talking With Lina Khan"
これはCUNY大学院センターで行われたポール・クルーグマンとリナ・カーンの公開対談の書き起こし。カーンは元FTC(連邦取引委員会)委員長で、現在はコロンビア大学ロースクール准教授兼マンダーニ・ニューヨーク市長の政権移行共同委員長。
独占・反トラストの知的遍歴
カーン:景気悪化の就職難でシンクタンクに就職し、出版・鶏肉生産・航空など様々な産業を調査するうち、数十社あった競合がどの市場でも数社に集約されているという実態を知る。
カーン:スーパーの棚に並ぶ洗剤やオムツは「選択肢があるように見えるだけ」で、実は数社が牛耳っており、農業市場も同様──消費者・農家の間にわずか4社の大手が挟まり、消費者は高く買わされ農家は安く買い叩かれている。
カーン:これが反トラスト法(独占禁止法)への関心につながった。もともと産業革命時の「トラスト」による権力濫用を規制するために作られた法律なのに、ぜんぜん機能していないじゃないかと。
Amazonの反トラスト・パラドックス論文(2017年)
カーン:2012〜13年ごろ、Amazonを通じて販売している事業者と金融アナリストに取材。当時の政策的常識では「Amazonは値下げのためには損も厭わない合理的でない企業」なので、競争問題にはならないとされていた。
カーン:この論文の真のテーマはAmazonそのものではなく、「短期価格への影響のみで反トラストを判断する」というシカゴ学派(ボーク等)の知的支配が生んだ盲点を暴くことだった。
クルーグマン:2017年の論文発表後、Amazonがホールフーズ買収を発表。それが「ビッグテックに限界はあるのか?」という公的議論の火付け役になった。
カーン:現在Googleは3件の別々の裁判で「違法独占」と認定済み。Amazonへの訴訟も進行中。
大富豪・個人への権力集中
クルーグマン:GMのような法人の独占と違い、今の巨大テックはベゾスやザッカーバーグという特定の個人と一体化している。これは19世紀の「ロバー・バロン(強盗貴族)」への回帰では?
カーン:Metaのような企業は複数議決権株式など「超絶重み付け株」の仕組みによって、取締役会による経営者への牽制機能がほぼ消えている。市場の集中だけでなく企業内の権力集中も進んでいる。
クルーグマン(補足):2024年の大統領選では300人の億万長者が全政治献金の19%を占めた(NYT報道)。
FTC委員長時代の実績
カーン:FTCは職員約1400人と規模が小さく、優先順位付けが命。最重要分野として①医療、②テック、③労働市場を選んだ。
カーン(医療):病院・薬局・PBM(薬剤給付管理者)の水平統合・垂直統合が進み、保険会社が薬局もPBMも兼業。インスリンを切り詰めて死んだ人の話を毎週のように聞いた。病院合併を各地で阻止し、マーティン・シュクレリ(ファーマ・ブロ)への生涯業界追放を勝ち取った。
カーン(労働市場):アメリカの5人に1人が競業避止条項(ノン・コンピート)の対象で、最低賃給のガードマンや飲食店員にまで及んでいる。訴訟と規則制定の両面で撤廃を推進した(フロリダのバーテンダーがセクハラから逃れようとしたら数万ドルの訴訟を脅された事例など)。
カーン(インフレ):集中度が高い市場では寡占企業が決算説明会で互いに「価格を維持するぞ」とシグナルを送りやすい。また乳幼児用粉ミルク危機(2022年)は、生産が4社に集中し1工場の汚染が全国品不足を招いた典型例──独占は「リスクの集中」でもある。
ニューヨーク市政:マンダーニ市長の「生活費」アジェンダ
カーン:マンダーニ市長は「ハラールカート飯が8ドルから10ドルになったのはなぜか?」という問いから出発するほど、物価高の原因を根本から理解しようとしている。
カーン:アフォーダビリティ政策は大きく3本柱──①「搾取的中間業者」の取り締まり(ジャンク手数料、サブスク罠など)、②公正な競争環境の整備(小規模ビジネスを縛る時代遅れの規制の撤廃)、③公的オプションの導入(公営食料品店、全市民対象の保育など)。
カーン:フードデリバリーはDoorDash等が中間に鎮座する「デジタル版ライン川の関所」。ライドシェアも同様。
クルーグマン(補足):公営食料品店への「社会主義!」という批判はヒステリックで、軍の基地には政府所有のスーパーがとっくに存在する。
市長権限の発掘(ニューヨーク版ロビンソン・パットマン法)
カーン:FTC時代の教訓は「すでに法律はある、使われていないだけ」。1994年の「米国製」虚偽表示規制や、1930年代のロビンソン・パットマン法(大企業への不当に有利な価格差別を禁じる法)も、1990年代以降ほぼ未執行だった。
カーン:ニューヨーク市にも1970年代制定の「非良心的商慣行禁止法」があり、病院が$6のタイレノールに$60請求するような「捕虜消費者」向け不当請求に適用できる可能性がある。市議会では市版ロビンソン・パットマン法制定の議論も進行中。
クルーグマン:それってロバート・モーゼス(法律の細則を読み込んで権限を最大化した都市計画家)の「善良版」では?
カーン:すべての弁護士が小さな字を読み込むのは仕事のうち。強いマンデートを持って選ばれた以上、使えるツールをすべて掘り起こす義務がある。
「富裕層・企業が逃げる」論への反論
カーン:大手企業はむしろニューヨークでのオフィスリース更新・拡大を進めており、逃げているのはワーキングクラスの市民のほう。CEOたちも「ニューヨークが住みやすくなれば人材確保に有利」と認識し始めている。
クルーグマン(笑い話として):フロリダに移ったウォール街の人が「フロリダで暮らさないといけないのが問題だった」と言ったそうだ。
@hazuma: 非人文系のひとで人文知が大事と思う人々にはぜひわかってほしいのですが、哲学書を読むのは「読みながら考えるため」なのであって、知識を手にいれるためではないです。そもそも人文系においては本の結論(だれだれはこう言っている)だけ知っていても、社交のネタぐらいにしか役立たない。
2026-04-05 Living in Hell — Paul Krugman
トランプが日曜朝にTruth Socialでイランに対する脅迫を投稿した。火曜日に発電所と橋を全部ぶっ壊すぞ、ホルムズ海峡を開けろこのクソ野郎ども、さもないと地獄だ、アッラーに栄光あれ、という内容。イースターの朝にこれである。
リンカーンの第二期就任演説「何人にも悪意を抱かず、すべての人に慈愛をもって」と並べてみろ。同じ国の大統領の言葉とは思えない。アメリカはこういう国になるはずじゃなかった。
火曜にトランプが本当に民間インフラ(発電所・橋)の大規模破壊を命令したら、それは文字通りの戦争犯罪だ。イランで大量の死者が出る。軍はその命令に従うのか? 一年前ならノーと言えた。しかし今は違う。
ヘグセスが過去14ヶ月にわたって軍を組織的に腐敗させてきた。倫理的懸念を示した将軍はクビ、知的に戦争を考えようとする士官もクビ。「戦士の精神」と「殺傷力」だけを信じる連中を残した結果、戦争犯罪の命令に従う士官が十分な数いる可能性がある。
ティモシー・スナイダーはさらに悲観的で、これは実質的にクープ(クーデター)の準備だと論じている。戦争を口実にして、トランプの最新予算案での狂気的な軍事費拡大は軍への賄賂だ、と。正しくないことを祈るが。
TACOは過大評価されている(Trump Always Chickens Out=トランプはいつもビビって撤回する説)。実際にはトランプはかなりの頻度で狂った計画を本当に実行に移してきた。
火曜までにアメリカは世界有数の悪党国家としての地位を確立しているかもしれない。こんな場所にいたくないが、警告はしておく。これは現実だ。自分がこれまで見た中で最もひどいことが起きようとしている。