脱アメリカ
トランプがまたグリーンランドをよこせとアンカラのNATO首脳会議で言い出したが、各国首脳の反応はやたら白けてた。もう「頭のおかしい伯父さん」扱いで、まともに取り合う気ゼロなんだよな。
WSJの記事によれば、今年頭にグリーンランド侵攻をちらつかされた欧州首脳たちが「セラピー・ナイト」と呼ぶほど感情的にキレまくった会合を開いたらしいが、そこからさらに状況は進んで、もはや和解は諦めて静かに「脱アメリカ化」を進め始めてる。
具体的にはマイクロソフトのTeamsやOfficeをやめてヨーロッパ製オープンソースに乗り換えたり、宇宙・AI・データセンターに巨額投資して米企業依存を減らしたり、米国製兵器がワシントンの許可なしでちゃんと動くかまで検証してる始末。
昔は「怖いけど尊敬はされてない」存在だったトランプが、今や「怖くもない」存在に転落した。理由は大きく三つ。
ひとつはイランでの大失敗。軍事目標を何一つ達成できなかったのに大勝利だと言い張るその滑稽さが、米軍の実力の限界と、トランプの自尊心にしか奉仕しない外交の空虚さを世界に晒しちゃった。おまけに暗号通貨と人民元のおかげでドルや米銀行を迂回するのも簡単になってきてる。
ふたつめはウクライナ。援助を99%削ってロシアの勝利を期待してたのに、ウクライナは持ちこたえるどころか押し返し始めた。欧州が資金を肩代わりし、ウクライナ自身も兵器を工夫して穴を埋めた結果、アメリカの支援なんて実はなくても何とかなる、ということを世界に教えてしまった。
三つめは関税をちらつかせた経済的恫喝の失敗。中国経済は関税をものともせず、しかもレアアース握られてるのはむしろこっちの弱み。カナダやメキシコみたいな対米依存の強かった国まで、カナダ産原油をアジアに売るパイプライン計画とか、アメリカ離れの動きを見せ始めてる。
結果、去年まで必死にトランプの機嫌を取ってた各国が、今はもう適当にあしらって「この人が呆けてても困らない世界」を静かに作り始めている。今回のNATO会合も実質的な成果ゼロで終わるのが確実視されてるけど、誰もそれにもう驚かない。トランプの支離滅裂な放言なんて、どうでもよくなりつつある。
トランプが執着している「世界は俺を尊敬している」という自己イメージが、ここ数日でついに崩れ始めた。今まで各国首脳はトランプを怒らせないよう表向き敬意を装ってきたが、そのメッキが剥がれてきた。
ゼレンスキーは「ロシアがまたアメリカを手玉に取った」とほぼ公言した。今まで思っていても口にしなかったことを、ついに堂々と言い出した。
スターマー英首相も「エネルギー価格がプーチンやトランプの行動で上下させられるのはうんざりだ」と発言、同一文でトランプとプーチンを並列した——これは相当思い切った踏み込みだ。「特別な関係」を何とか維持しようとしてきた人物がここまで言うのだから重い。
なぜこうなったかというと、米国がイランという四流国家と戦って負けたからだ。軍事的に強いとされていたはずの米国が情けない結果を出し、同盟国を脅したり戦争犯罪をちらつかせたりしながら、最終的には惨めな降伏に見えるものをやった。結果として、世界はもはや米国を恐れてもいないし信頼もしていない。
ウクライナ情勢も興味深い展開を見せている。トランプはプーチン側に立って米国からの援助を全部打ち切ったが、ウクライナは欧州の支援だけで踏ん張るどころか、ドローン戦争で優位に立ちつつある。ウクライナの先進的なドローン技術は中東でも注目されており、湾岸諸国がウクライナとの武器取引を模索している——「アメリカに頼れないならウクライナに聞こう」という話だ。これがゼレンスキーをより大胆な発言に駆り立てている。
信頼できる同盟国を持つことは地政学上の大きな資産だ。それをすべて失うのは大きな損失であり、回復は容易ではない。
「私はこれを喜んでいるわけじゃない。次の大統領が、完全に傷ついたブランドを引き継ぐような事態は避けてほしかった。でも、そっちの方向に進んでいる」——これは筆者(クルーグマン)自身の言葉だ。最悪で最も愚かな連中に任せた結果がこれ、という苦々しい締め括りである。
トランプ政権の理不尽な通商いじめで、世界(政府も企業も)が米国依存を減らし、“経済的離婚”に向かってる。戦後の「ルールに基づく貿易体制(米国が信頼できる番頭)」は終わりつつある。で、その帰結はアメリカ人が目に見えて貧しくなる
発端
EU(欧州連合)とインドが自由貿易協定を妥結(1/27のニュース→ブルームバーグ経由で紹介)。ウルズラ・フォン・デア・ライエンが「mother of all deals」とか煽る。盛ってるけど、象徴的にはデカい。
なぜ象徴的か
これは単なる関税の話じゃなくて、「米国が信用できない・面倒くさい・当たり屋」になったので、世界が代替ルートを作り始めたってサイン。クルーグマンはこれを“経済的離婚”と呼ぶ。
中身はわりと“ちゃんとした”貿易協定
欧州→インド:自動車やオリーブ油みたいな輸出で関税が下がる
インド→欧州:労働集約品の輸出でアクセス改善
しかも「努力目標」じゃなく、測定可能で執行可能な条項がある、と強調(=トランプの“ディール”と対比)。
トランプの“ディール”disり(ここが本編の半分)
トランプは「各国が米国に18兆ドル投資を約束した」と言うが、根拠不明。
ピーターソン国際経済研究所の試算だと公表分を積んでも約5.7兆ドル程度
さらに中身も、「煙と鏡」
2/3が湾岸産油国(そもそも米国に大投資する構造じゃない)
EUの6000億ドルも実体が薄い(vaporware扱い)
EUもインドも、米国から離れたい理由がある
EU:通商面の言いがかり、テック業界のゴリ押し、内政干渉、グリーンランド云々の脅し、等々で不信感。
インド:対米輸出に高関税(平均34.5%)。昔の米政権は対中バランスでインド重視だったのに、今はそういう“正気の外交”じゃない
政府だけじゃなく民間企業もピボットしてる
ロイター等の見出しを並べて「企業も米国外に逃げ始めてる」と補強。
「米国市場にアクセスできないと世界は死ぬ」みたいな脅しは、実は大して効かない。
米国の輸入=“世界(米国以外)のGDP”のうち何%を吸ってるか。平均で5%未満(カナダ+メキシコを除くともっと低い)。一方でEU市場はそれより重要度が高い(ほぼ倍)。データは世界銀行。