生成AIをつかった研究プロジェクトのはじめかた
2025/03/06 motoe.icon
※この記事は随時アップデートします。初出は2025/03/06。
本江研では、「情報技術が拓く都市と建築の新しい使い方をデザインし、人々が持てる力を存分に発揮しあえる環境をつくりだす」ことを目指して、建築空間をめぐるコミュニケーション技術の研究、創造的なグループワークの技術と環境の研究、などをしています。大きな方向だけがあって、具体的なテーマ、研究対象、設計対象は学生それぞれが独力で見つけてくることになります。
とはいえ、思いつくテーマは漠然としているし、参考になりそうな本や論文もすぐには見つからないしで、考えあぐねてしまい、なにから手を付けていいかわからない。はじめの一歩がでない。当然のことです。
しかし最近になって急激に強化されてきた生成AIのサービスは非常に強力な伴奏者になります。
以下のような手順で、はじめの一歩を進められるでしょう。
1. まずはテーマをふわっと考える。○○について、とか。
ここは人間がやるしかありません。
2. AIとのチャットで、クエリ(質問文)をまとめる。
相手はChatGPTでもなんでもいいです。
「○○についてDeep Ressearch をしたいので、適切な質問をつくりたいんだけど」とか言って、対話をはじめる。
これだけでもずいぶん新しい知識を得られるが、通常のAIチャットは確率の高いことを言っているだけなので、嘘も多い。
3. 各社の生成AIの、Deep Research モード(サービスによって名称やUIが違う)でさきほどのクエリを投げ掛けて、調査結果を得る。
Deep Research のイメージは この動画の頭のところとか。 各社のDeep Researchをつかってみる。
質問文を変えたりしながら、調査結果をいくつかつくる。
ChatGPT、Gemini は課金版でないとDeep Researechは使えないかも。日々変わるが。
Perplexity、Genspark、Claude、XのGrok では、無料版でも使える。回数制限はある。
知らない分野のことなので、調査結果を読んでもはじめはほとんどわからない。当然なので心配しなくてよい。
4. 調査結果を NotebookLMの「ソース」に入れて蓄積する。
NotebookLMの使い方はこの動画とか。Deep Researchとの連携についても言及アリ。 NotebookLMは3カラムになっている。左が教科書、真ん中で先生と対話して、右のノートをつくる、というイメージ。
NoteBookLMは無料版で大丈夫。
Deep Research の結果そのもののコピペをソースに。
調査結果にある参照元のウェブページや論文、動画などでよさげなものはオリジナルを見て、それもソースに。
5. NotebookLM でチャットしつつ、調査結果の中身を掘って、メモにしていく。
わからないなりに、少しわかる部分についてチャットで聞いていく。「××って何?」「△△って、こういうこと?」など、子供みたいに質問を繰り返す。無限に付き合ってくれるので、気を使わずに質問し続ける。
通常のAIチャットは確率で答えるが、NotebookLMはソースに基づいて答えるので、はぐらかされたりしないし、ズレたり、嘘だったりしにくい。
チャットでよさげな内容がまとまってきたら、メモに保存する。
それっぽいメモがどんどん出来ていくが、それは借り物の知識なので、AIが生成したテキストでもちゃんと読む。すぐ忘れるけどかまわない。
実験計画やゼミのレジメもチャットで話しながらつくれる。
6. テーマに関わる知識のネットワークを脳内につくる。
脳内に知識のネットワークをつくることが大事。オンデマンドでAIで調べればいいや、とはならない。
人は知らないことはわからない。
繰り返し出てくるキーワードや人名、典型的なロジックなどを意識する。
AIがつくったテキストだけでなく、遡って調査結果にある参照元のウェブページや論文もざっとでいいので読む。これをやらないと知識が脳内に定着しない。読んだらNotebookLMのソースにいれる。外国語でも翻訳機能をつかって読める。
メモは自分でも書き込めるので、勉強のノートをつくるつもりでつくる。
7. ゼミで話してみる
ゼミに来る。
こんなテーマを設定してみた、下調べをしてみた、知らなかったこんなことがわかった、新たにこんな問題が設定できそうだ……という話を振ってもらえれば、皆で議論できる。AI相手とは違う話になるはず。
それもメモにして、NotebookLMのソースに加えることができる。
8. 繰り返し
すこしずつ視点をずらしながら1から7を繰り返す。
受験勉強でも経験があると思いますが、ある分野について一定の知識を得て、それらが連関し、脳内に知識のネットワークができあがってくると、ある時、これまでチンプンカンプンだったものが突然わかるようになって、景色が変わります。テーマをたてて、その研究をするためには、この知識ネットワークを脳内に構築する作業が必要です。
漠然と本を読んだり、論文を漁ったりするより、ずっと効率よくやれるので、生成AIを活用すべき。
本江が指導教員としてゼミでやっていることのかなりの部分は、このプロセスです。マジで失業の危機。