成果を生み出すテクニカルライティング
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目次を見ずに買ったので、思っていた内容とかなり異なっていた。とはいえ、言語化がなぜ大事なのか、とかプレゼンに必要なこととかも改めて言語化されていたのは良かった。報告書とプレゼン、それから論文は人に自分の成果を伝えるという点で同じ、みたいな流れで書かれてあったのでそのあたりは個人的にすごく腹落ちした。
プレゼンの経験がそんなにあるわけじゃないけど、あまり困ったことなくてそつなくできる(と思っている、上手いとは言ってない)のは、論文書くときの構成とかが無意識に頭に入っているからかもしれないなーという気づき。知らないうちに訓練されていたのかもしれない。言語化が苦手ではないと感じる今があるのは、知らないうちに訓練していたからか、というのは新たな発見だった。小論とかも苦手ではなかった方だけど、強みと感じるほどではなかったもんな、と思った。
意識していなかったけど、プレゼンの作成時は何となく本書に書かれているようなプロセスを追っていた自分がいたので、改めて自信にもなったし他の人に言語化をすすめるときにこういう風に伝えればいいのか、というのが非常によく分かった。言語化が癖になっていない人は言語化の重要性とか言語化によって得られるチカラを体験していないはずなので、そういう人にはいい本だと思った。なぜ言語化するのか、のくだりを読んでいると自分でなんとなくメリットに感じていたことがしっかりと言語化されていたので、自分の言語化能力もまだまだだな、という思いに至った。
折に触れて言語化するようになって、メリットを感じていたのだけどそれを言語化できていなかった、ということに気づかせてもらえた。深いところまで考える、というクセが無いなと痛感した。私はやはり研究者には向いていなかったということでしょう。
以下、本書より抜粋しながらメモをまとめていく。
言語化が「サイエンス」の本質
また、サイエンスの本質は、アートを言語化する取り組みにあります。つまり、まだ十分に言語化できていない「アート」を、言葉で論理的に説明して客観性をもたせ、そこから普遍的な法則を見出そうとする挑戦を「サイエンス」と呼びます。言語化するからこそ成果を明確につたえることができ、他人にそのせいかを再現させることができます。そして、サイエンスにより言語化がなされた後、それを具現化するのがエンジニアリングです。言語が客観的であるからこそ、他人もそれを具現化できるのです。人類は「アートを言語化して具現化する」というサイエンスとエンジニアリングを延々と繰り返し、ここまで進歩してきました。〜中略
そして、不確実な世界で「正解のない課題」の解決に向けて、課題の設定と解決策の実行とを小さく繰り返しながら、それらの妥当性を言語化によって検証し、ベストなアプローチを少しずつ明確にする能力こそ、エンジニア・研究者に求められる「解決策を考える能力」なのです。
エンジニア・研究者の仕事は「思考を整理する」(論拠をあきらかにする)こと
「成果が出たから論文を書く」のではなく、「論文を書けば(思考が整理されれば)、その根拠が導く通りに成果が出る」という順序が理想なのです。
まあこれはかなり極論。生化学分野で実験を通して結果をまとめる論文の場合は、仮設通りに上手く結果が出ることのほうがまれだと思うし本書のような短いスパンで実験をまわすことなどできそうにない。だけど、極端に言うとここまでなるのは確か。正しい課題設定さえできれば問題は解けたようなもの、ということか。著者は機械学習・人工知能分野を専攻していたそうなので学問領域の特性も大いに関連あるな。
普段から言語化する
誤解を含むことを承知であえて要約するなら、「普段から言語化するから何にでもPDCAを回すことができ、PDCAを回せるからこそ能力が向上する」ということです。
例えば、町中にあふれる広告を眺めて「あのコピーがなんかいいよね」と感心しているうちは、プロのコピーライターに離れないそうです。プロになるためには、「何がどういいのか?」「なぜいいのか?」「自分だったらどう書くか?」「その結果どうなるか?」など、いろいろな切り口で「なんかいいよね」を言語化して自分の血肉に変える必要があるのです。〜中略
「書く能力=思考する能力」ということであり、「自分の言葉を生み出す」という「位置づけに基づく言語化」によって能力を伸ばす必要があるということです。書くことによって私たちの思考は洗練され、知識がアップデートされるのです。〜中略
言語化の能力こそ改善を生み出す基盤になります。
全体のまとめ
仕事ができる(実務能力が高い+コミュニケーション能力が高い)とは以下の4つの能力が高いこと
課題を発見する
解決策を探す
相対化する
言語化する
黄金フォーマットに則って伝える情報を整理する
背景
課題
手段
効果
黄金フォーマットの関連性
code:text
前提条件 →(しかし)→ 課題
↓↑(差分) ↓↑(裏返し)
手段 →(だから)→ 効果
アプローチ 結論
ストーリー重視のプレゼン
背景→課題→手段→効果
結論重視のプレゼン
効果→結論→背景・課題・手段
なぜテクニカルライティングが必要か
実務能力の本質
優れた課題を設定する能力
課題解決能力
コミュニケーション能力の本質
相対化する能力
言語化する能力
サイエンスの本質は言語化
言語化をとおして具現化する
言語化でなぜ情報が整理できるのか
絵や映像などに比べ伝達できる情報量が少ないのがテキストコミュニケーション
言語は時間軸に沿って展開される一次元の情報源
情報量は必然的に絞られるので整理・構造化を強制されることになる
整理・構造化により本質が見えてくる
文章のうまさと言語化の巧拙は別物
テクニックとして身につければいい
課題設定がうまくできない理由
先行技術を知らない
相対化する能力の不足
課題にフォーカスできないな、と思ったら課題設定がまずいかも
解決策を思いつかない理由
専門知識の不足
課題設定が甘い
正しい言語化は正しいPDCAを導く
現状と理想の状態の言語化が正しくできれば、正しい相対化につながり、つまり課題を正しく言語化できるということ
課題設定さえ正しければ、着実にPDCAをすすめる事ができる
文章を書く、という作業の自由度の高さが悲劇のもと
自由度が高いゆえに難しい
フレームワーク化してしまえばいい!
黄金フォーマットに従えば良い
背景
必要な背景の粒度は聞き手によって異なることを意識する
課題
性確認言語化し、仮設の精度を上げる
手段
差分「のみ」をオリジナリティとして抽出する
英語に置き換えて主語が明確か、合っているかを確認
受動態にしか置き換えられないようであれば主語がない、ということかも
効果
「課題」の裏返しが「効果」になる
テクニカルライティングのチェックポイント
従来技術の把握は正しいか
従来技術で何がどこまで達成されているかを徹底して理解できているか
その課題が従来技術では解決できない原因に説得力はあるか
従来技術を持ってしても課題が残る理由が明確か?=逆説関係が強固か?
基礎との差分「のみ」抽出できているか
オリジナリティとして正しく特定できているか
課題と結論が裏返しの関係を満たしているか
当初掲げた課題に対して何がどこまで進捗したかのインパクトが明確に言語化できているか
その結論が導ける理由に説得力はあるか
結論に至る根拠は明確か?=順接関係が強固か?
目的に応じた構成を選択できているか
ストーリー重視、結論重視の選択は適切か
https://gyazo.com/a67b646f5644baa40b7c419af407ae87
プレゼンテーションについて
誰に、何のために、なぜプレゼンをするのか
プレゼンの目的はなにか?(WHAT)
その内容で目的を達成できると考える理由はなにか?(WHY)
プレゼンテーションでは、WHO/WHATに応じた内容を意識する