エンジニアと創り手(クリエイター)についてちょっと考えた
自戒を込めて、残しておきたい。
きっかけはこの資料↓
プロダクトマネジメントをチームで推進していくことを啓蒙する資料で、300ページを超える超大作である。
個人的に特筆すべきは、320ページ以降のSide Bの資料の内容だと思った。
ここに至るまで、なぜチーム全員でプロダクトマネジメントをするべきか、しないとどうなるか、などの話と明日からどういうアクションを取ればいいか、みたいなことが書かれており「なるほどなるほど」と読んでいたわけだが、理想は確かにそうだよなぁというような、あえて悪い言い方をすれば冷めたような目で見ていた節が自分の中にもあったんじゃないかと思う。
「と思う」というのは、自分ごととして読んでいた「つもり」でしかなかったことが、このSide Bの資料を読んでいて「グサッと」きたことによって思い知らされたからである。
思い当たる節があるからハッとさせられたわけで、ということは私はまさにこの資料で述べられているような状態のエンジニアであるということになると思った。
どういう状態かというと、「プロダクト開発にあまり興味がないエンジニア」の状態である。
正直自分の中にこういう気持ちがあるのを自覚したのはショックだったけど、事実なので仕方ない。
プロダクトマネジメントにまつわる業務は試行錯誤が必要で失敗もたくさんするし、本気でプロダクトを世の中に出そうとする人たちと肩を並べる覚悟が必要。それはプロダクトに責任を持つことで、それは今まで消費者でしかいなかった人にとっては恐ろしいことなんだ、と筆者は言っていた。
プロダクトマネージャーたちは、95回失敗して5回成功して、その5回の成功を喜んでいるのだ、と。
エンジニアがこういう諸々を引き受けるのが嫌だから、分業という一見最適解のように見える道に進んでしまうし、それが都合がいいのでそこを守ろうとしていたのだ。
卑下しない、忖度しない、評論しない、というのをジーズアカデミーの入学式で聞いたばかりだったこともあり、通じるものがあると思った。一歩引いた場所から評論するのをやめるというのは、自分が消費者ではなく創り手になる覚悟を持つというのと同じことを言っている。 実際に、自社のプロダクトは我が子のように思えるし、全部が自分ごとになる、というのをスタートアップの執行役員をやっている友人が言っていた。彼女はエンジニアでもデザイナーでもないのだが、完全に「創り手」側であると思う。
プロダクトマネジメントの視点を持って考えることができるエンジニアと、そうではなく社内受託のような働き方しかしないエンジニアだったら、どっちに未来があるだろう。これはもちろん会社の中だけの話ではなく、会社に属していないエンジニアにも言えると思うし、もっというなら職種に限らずユーザーに価値を届けることを考えられない人って生き残れないんじゃない?と思う。
コードはChatGPTに書いてもらえる時代。「コーダー」と「エンジニア」の差がもっともっと明確になっていくのではないだろうか。 エンジニアというロールは、創り手としてのスタンスが必須になると思う。これまでもそうだったよ、という人はいっぱいいると思うし当たり前のようにそうしてきたし今もそうしているエンジニアの人たちを社内でもたくさん見ている。でも、改めて自分を振り返ると覚悟が足りなかったな、となったのだった。世界の変化のスピードはどんどん上がっている。ユーザーからのフィードバックを価値としてプロダクトに即組み込んでいくことができないチームのプロダクトは淘汰されるのが目に見えていると思う。
誰か(例えばプロダクトマネージャー)がやってるからいいや、では済まされないのだ。素早いフィードバックループを回すことができるチームは、いうまでもなくチーム全員でプロダクトマネジメントに取り組んでいるチームである。
エンジニアの価値を判断するときにコーディングスキルやエンジニアリングの知識以外の能力の比重がこれまで以上に大きくなっていくのかもしれない。
2023.11.22 追記
このブログを発見した。
曰く、やはりエンジニアの中でプロダクトマネジメントの深いところまで「興味を持つ」こと自体が難しいという意見。確かにそれはそう。なので、専門性は違うけど力をあわせる、というのが必要なのではないかという提案をされていた。
「要はバランス」という話になってしまうわけですが、良いものを良いやり方で届けることを共通の目標として、チームメンバーの興味や能力が許す範囲で2領域を重ね合わせることで、「専門性は違うけど力を合わせる」という空気を醸成していくのが現実的な落とし所になっていくと考えます。分業や分断という言葉で捉えてしまうとネガティブな印象になってしまいますが、そもそもプロダクト開発は均質な人材でカバーできるほど簡単な世界ではないようにも思います。専門性を分担して掘り下げて力を合わせるという考え方をして、お互いに越境を称え合えると良いですね。
上記ブログより引用。
2023.12.19 追記
ばんくしさんのエントリ。ここでも距離感難しいよね、という話題から入ってる。
実際そうだと思う。ばんくしさんは「ハードシングス」だったと書いている。
近年「エンジニアは事業貢献してこそ」「エンジニアもユーザファーストでビジネス貢献」といった言説がIT界隈で増えて来ている感じがしている。
~中略
「狭義」「広義」はあるものの、やはりビジネスとは経済行為であり、極論お金のやり取りで成立している。
その前提に立つと、エンジニアは残念ながら多くの場合、ビジネス職に比べて所謂狭義の経済行為の渦中に居る時間が短い
最終的には、エンジニアがビジネス貢献を求められる傾向にあること、またその中で自分の所属する組織ではどの程度のビジネス貢献が求められているかを把握できることが大事、という感じの結論だった。
エンジニアは専門職でもあるので、個々人でどう働きたいかは違うだろうし、専門職のプライドを持っている人もいる中でひとくくりには確かにできなさそう。とはいえ組織のニーズとマッチしてなかったら辛い。組織ごとに何を優先するかは違ってくるのはその通りだと思うし、自分がどうしたいかで選べるのが良さそう。yigarashiさんの要はバランス、というのもこのことを指している。
これらを受けて自分はどうか、と改めて振り返ると、やはりユーザーに価値を届けられるのがいいなと思う。金銭的に価値を生むというのは、それだけ社会の中で価値があることの証明になる。そういうお金を産むことの価値を個人的には無視したくないなという気持ち。純粋に技術だけに興味があって、というよりは技術を通して世の中の役に立つことが私のスタンスだと思う。