もっとおもしろくできる
は、前職の企業理念である。
これ、丸4年在籍している間に思考回路に深〜く刻まれているのだなぁと思ったのでメモ。エンジニアのキャリアのスタートがペパボでよかった。
たまたま社内のエンジニアの方の実装手段の壁打ち相手みたいなことをやったのだけど、そこから雑談的にいろいろと話す中で、同じエンジニアでもエンジニアの文化って企業によって違ってて、万国共通ではないのだなと実感したのだった。当たり前のことではあるけど、1社しか知らなかったので改めて実感した、ということ。
念のために補足するが、別に今の会社で悪い事例があったとかいうわけではなく、単純に比較して違うんだなぁと思った、という話です。
今までペパボの中でみんなで当たり前にやっていたコミュニケーションの取り方...たとえばオープンな場所においてる日報の使い方とか、Slackで繰り広げられる日常会話のようなコミュニケーションとか、テキストコミュニケーションやドキュメントなどの活用の仕方において、いろんな仕組みを効率化しつつおもしろがってやる、みたいな当たり前が(少なくとも私にとっては)とても合理的かつ素晴らしいものだったんだなと気付かされた。
今の会社は、当たり前のようになんでも聞きやすい雰囲気があって助け合えるし、コミュニケーションもしっかり取れている。なのだけど、テキストベースのコミュニケーションを有効活用してさらに良くすることができそうだなー、と思って比較したのがペパボのやり方だった。というか、私はそれしか知らないので比較対象はどうしてもそうなってしまうのだが。
今の会社のコミュニケーション、改めてしっかり書いておくが別に悪い点はない。わからないこととかがあると丁寧に説明してもらえるし、仕事が忙しい時にも助け合う環境があって、小さい会社ながらみんなでうまく回していてすごいなと思う。ただ、ペパボの場合はおそらくそういう状態からさらに貪欲に「なんか変えてみよう、試してみよう」という力学が働くのだろうなと思った。そしてそれを助けていたのが、「もっとおもしろくできる」だったんではないかなぁと。単純化しすぎているかもしれないけど。
もっと効果的に、もっと効率的に、もっとXXXに、というふうに何かをよくする方向に突き詰めて考えていくと、割とギスギスした感じが生まれやすい印象なのだけど、「もっと」+「おもしろく」ならギスギスする印象はないし、失敗するかもしれないと尻込みせず、おもしろくすることを目的として前向きに変えていくことができる。それに、「もっと」という言葉は何かの完成形や到達点を表す表現ではなく、あくまで「今と比較して」という比較表現なので尽きることがない。つまりゴールがない。
結果的に、前向きにいろんなことを変えていくモメンタムが生まれやすい環境になったのではないかなぁ、などと雑に考えたのであった。
いまこのようにして自分の言葉で言語化してみたけど、入社前にまさにペパボのカルチャーがいいなーと思ってペパボに憧れていた自分が惹かれた理由もこの辺りの前向きさにあったのかもしれないと思う。
きっと社員がみなこの企業理念が好きで、それを体現したペパボのカルチャーが好きで、誇りだったからみんなで大切に守ってきたんだろうなぁと思ったりする。
もちろん、企業理念さえ据えれば社員がみんなその通りに行動するなんてことは、100%起こらない。企業理念が文化として当たり前に根付いている環境を醸成するには、社員ひとりひとりが意識してそうあろうとする努力が必要で、社員が入れ替わっても新しい人たちがペパボの色に染まっていく環境を維持できているのは素晴らしいことだと思う。
だって実際に辞めていく人も入ってくる人も年間通してそれなりの数いるから。そもそもトップダウンでやってるわけではないのにペパボくらいの規模でいい感じにカルチャーを維持し続けるというのは、とんでもなく難易度の高いことなのでは?
とてもレアな存在なのかもしれない。
社内の文化もそうだけど、エンジニアとしてのスタンスというか考え方みたいなものについても同様だ。在籍中、折に触れさまざまな立場の人がお気持ち文書みたいなもので「エンジニアとしてこういうのがいいよね、こうありたいよね」をいろんな言葉でいろんな場所に書き綴っていたのを目にしていた。これも文化を継承するために必要なことだったのだと思う。ルールとして定めたりしているのではなく、お気持ちとして表明しているのがポイントだ。行動の規範としたい良い行いに対して、ルールや規則のような守るべきものとして皆が認識するのではなく、自分たちがありたいと思う姿に近づくためにそうするもの、というのが暗黙のうちに醸成されていってたと思う。
転職してみると、いろんなことが差分として浮かび上がってきてとても興味深い。異なる環境で働いてみることの大切さを感じる。ペパボのような素晴らしいカルチャーを持った組織で働けたことを改めて誇りに思ったし、いい経験をさせてもらった恩返しと思って、新しい環境でも自分の引き出しを増やしつつ、提供できるものはどんどん還元していきたいなと思った次第。