【4-3】先行研究を受けた考察の検討
先行研究を受けて挙げた下記の三点を中心に実験結果を考察していきたい。
i「既存のクチコミメディアのクチコミは、ノイズ、弱いつながり、疑念的態度の三点によってクチコミの信頼性を失っている状況にあり、クチコミ抑制効果をもつ」
ii「つながりの強い消費者同士のクチコミコミュニティでは独自性欲求がはたらかない」
iii「ノイズを除去し、強いつながりをもつ被験者同士のメディアを用いることが消費者のクチコミ行動促進につながる」
iに関して、実験前アンケートQ4によるとほとんどの被験者がいずれの要素に関しても心理的障壁を感じたことがある、といった結果を導き出せたが、すべての被験者がその経験がありながらも継続して利用しているという点から、必ずしも信頼性を失っているとは言い難い結果となった。だが後半部分において、実験前アンケートQ5-5、Q7、Q10、Q11における「つながり」がクチコミを抑制させ、またSNSにおいて「つながり」の強さがクチコミ数を促進していると考えられ、そして実験後アンケートのクチコミ抑制要因としての「つながり」に関する数値の高さから、三要素のうち「つながり」の弱さに関してはクチコミ抑制効果が認められていると考えられるが、被験者数の不足から、一概には言い切れない。
Iiに関して、表7から読み取れるように、実験前アンケートで既存クチコミメディアに抱いたことのある心理的障壁(6人中5人)がなくなったと回答した被験者が4名、またハードルが下がったと回答した被験者が2名という結果となったことから、概ね実証されたと考えられる。
Iiiに関して、被験者は実験において、つながりが希薄な状況がクチコミを抑制するという回答が比較的多く得られ、またクチコミ促進要因である「つながり」(=「親切心」「相互理解」「同調性」をすべて足した数値)に関する回答が圧倒的に多く得られたため、実証されたと考える。しかし、本研究では被験者が大規模な数ではないため、一概には断言できないとも言える。また、ノイズを除去した環境に関しては、実験後のアンケートにおいて被験者の間で意見が分かれている(表3、表4赤字下線部)。情報量が少ないという点において、ポジティブな意見としてはノイズが少ないという要因から信頼性が増すが、逆に比較対象がなく、主観的な情報という点において信頼性が低いという意見も存在した。
実験前アンケートからはノイズとなる、「情報の量が多すぎる」という回答が過半数の被験者から集まっていたが、以上の点によりノイズに関しては実証に至らなかった。