【4-2】新たなクチコミ促進要因、抑制要因
本実験を経て、「つながり」がもたらすクチコミ促進要因とクチコミ抑制要因となりうる新たな要素が明らかになった。
以下の通りである。
・ クチコミ促進要素:親切心、相互理解、同調性、手軽さ、自己表現
・ クチコミ抑制要素:手間、周囲の目
クチコミ促進要因
利用後アンケートの分析から、クチコミ促進要因として当初から想定していた指標(つながり)に加えて、「自己表現」「手軽さ」という二つの要素が導かれた。
「自己表現」は、アンケートにおける「周りに共有したい」「自分が行ったことある店にコメント」といった部分から導かれる。自分の情報を誰かに知ってもらいたい、という感情がeクチコミを促進する要素であり、SNS上で紹介する場合の動機にも挙げられている。通常SNSでのつながりは既存のクチコミメディアよりも強い紐帯となっている場合が多い。このことから、本メディアが閉鎖的であり親密性が高いという理由で「自己表現」がクチコミ促進要因として考えられる。
また、「手軽さ」に関してもアンケート結果からクチコミを促進させるという旨の複数の回答が得られた。この「手軽さ」という要素は後述するクチコミ抑制要因である「手間」や「周囲の目」と表裏一体の関係であると考えられ、クチコミ抑制要因が働かない時にのみ現れるため、効果が高いと考えられる。
促進要因の一つである「つながり」という要素は、「親切心」「相互理解」「同調性」という要素に分解することが可能であった。
「親切心」は、「教えてあげたい」などの回答から導かれ、親密な関係の他者に、自分から情報を「教えたい」と考える心理からクチコミを促進させる。被験者のような既存のクチコミメディアではクチコミ投稿を積極的に行わない消費者でも、つながりを持つ他者には進んで自分の情報を開示したいという心理となる結果となった。
また、「相互理解」は表2.表3の黒下線部の部分などから導かれ、親密な他者の新たな一面を発見したい、理解したいという感情からクチコミを促進させる。本クチコミメディアで被験者の投稿が促進している理由はこの要素によるところが大きいと言える。
既存のクチコミメディアでは、クチコミを閲覧することは他者を理解するということにはなり得ず、ただ情報として個人にストックされる。つながりが深い関係性の中で、同じメディア上で情報交換をすることこそが、普段の生活上では生まれない相互理解が発生させ、それが被験者にポジティブな印象を与えていることがわかった。
つながりをもつクチコミメディアだからこそ、情報収集以上の価値が本メディアには見出せると言える。
加えて「同調性」は「〜が投稿していたから」といった回答から導かれる。好きな人の行動をつい模倣したくなるというという心理が存在する。この心理によって、親密性が強い被験者感では本要素がクチコミを促進する結果を導いた。
クチコミ抑制要因
利用後のアンケート結果からクチコミ抑制要因も、先に記した三要素以外にも、新たに「手間」「周囲の目(プレッシャー)」といった要因が導き出せる結果となった。
実験前後のアンケート結果からわかるように、普段進んでクチコミを行わない消費者にとって、eクチコミを投稿という行為はそもそもこれらの要因から抑制されていると考えられる。
「つながり」が薄い他者に向けてクチコミ投稿をする場合消極的になるという意味での心理的障壁ではなく、「つながり」が薄い多数の他者に見られているといったプレッシャーが、クチコミ投稿の抑制要因となっていることがわかる。
これらのクチコミ促進・抑制要因はいずれも回答から複数以上導かれており、要因として妥当であると考えられる。これらが影響し、「つながり」を持つ本メディアにおいて、実験前のクチコミメディア利用状況と比較して被験者のクチコミ数が増大する結果を示したと考えられる。