【1-2】従来のクチコミの信頼度を高める三つの要素に関して
インターネット上に存在するクチコミをみて、信用できない、胡散臭いと思うことが誰しもあるかもしれない。それはなぜだろうか。先行研究を交えて検討してみたい。
クチコミの信頼性はインターネットの普及する現代社会において、 ①ノイズ、 ②懐疑的態度、 ③つながりという3つの理由によって高められているとされる (Rosen、2000)。
だが、昨今の情報化社会においてはeクチコミにおいて、この本来のクチコミの信頼度を保証していた三要素が悪い方向に進んでいると考えられる。三要素の定義を紹介し、【1-4】においてこの問題点で詳しく述べたい。
まず、宮田(2006)によると、 ノイズとは、社会のなかにあふれる情報供給の過剰さからきており、 近代では、 とりわけマスメディアから膨大な情報量が発信されている。しかし、そのようなマスメディアからの広告効果は極めて低いということからわかるように、 その成果は、必ずしも出稿量に見合ったものではない。すなわち、人間の情報処理能力を超えるような情報量との接触は、 ノイズにしかならない。
このように、従来クチコミは情報過多を生み出したマスメディアの相対的な地位の低下と逆説的に、口コミの影響力が評価されていた。
また宮田(2006)は、懐疑的態度を、消費者が製品やサービスなどの売り手に対して抱く消極的な態度のことと定義している。日々接する機会の多い街中の広告や、製品を販売する人間からのコミュニケーションでは、その情報の発信者が自身にとって都合の良いことしか言わない。そうしたことを日々経験している消費者は情報発信者に対して懐疑的な態度を抱くようになる。 (宮田、2010)それに対して従来のクチコミでは、売り手とは無関係な第三者である消費者、 さらには、 実際に使用経験を持つ消費者によってもたらされていたため、信頼度が高く積極的に活用されていた。
最後に、 宮田(2006)はつながりを、 ソーシャル・ネットワークのことであると定義している。 クチコミの流れは消費者のソーシャル・ネットワーク構造に規定されている。インターネット等のメディアの登場で、 新しいつながり方が生まれ接触機会が少ない知人といった弱い紐帯は集団を越えて商品情報が伝わる 「橋」 機能を果たしているが、 接触機会の多い家族や友人という同質性の高い強い紐帯の方が高い信頼性を持ち、情報の流れを促進し、意思決定過程への影響力が大きい (Brown & Reingen, 1987)。
インターネットが発展してから今日まで、クチコミの信頼性は上記の三つの点によって担保されてきたが、クチコミによる購買者に与える影響力に関する研究が増加するにつれてそれを商業的に利用しようとする業者も増加している現状が存在する。企業戦略に大体的に取り込まれ、営利目的の側面を帯びたクチコミは上記の点による信頼性を高める効果が薄れていると考えられ、インターネット上のクチコミにおいてはこれらのクチコミの信頼性における要素は必ずしも信頼性を高める方向に働いているとは言えないという問題が存在する。