【第4章】考察
【4-1】分析
実験前アンケートにより、被験者全員が少なくとも週に何度かはクチコミメディアを利用しているにもかかわらず、被験者6人中5人はクチコミに対して心理的な障壁(クチコミ発信、閲覧に関して負の感情)を覚えたことがあることがわかる。
またeクチコミを既存のクチコミメディアに投稿したことがあるグループでもクチコミ投稿頻度は多くて半年に一回であり、クチコミの主な動機(正の方向)は、「記録のため」「情報収集のため」が同率であった。ここから、ほとんど発信することなく、他者とのコミュニケーションを想定しない利用をしていることが読み取れる
eクチコミを投稿したことがないグループではなぜ投稿しないかという設問の回答から、つながりの薄さにより消極的、そしてそもそもクチコミ投稿に無関心な姿勢が明らかとなった。またこのような既存のクチコミメディアへのクチコミ投稿状況とは対照的に、SNSにおける紹介は過半数が経験したことがあり頻度も比較的高いという結果となった。これらは、紹介する動機に関する設問の結果からもわかるように、SNSがクチコミメディアと比較して強い「つながり」を持つからだと言える。ただし、SNSにおいても少数ではあるが、「つながり」の薄さや、「独自性欲求」が働くといった理由で心理的障壁を感じる被験者もいた。
実験結果においては被験者全員のクチコミ発信を促進させる結果となった。
実験後アンケートを分析する過程で、本来クチコミ促進要因、そして抑制要因としてあげていた項目だけでは十分でない回答が存在することがわかり、新たに指標を作成した。被験者の言葉から様々なクチコミに影響する要因を導くことができ、クチコミ促進要因として「つながり」を細分化し、「親切心」「相互理解」「同調性」の3つとした。またクチコミ抑制要因として新たに「周囲の目」「手間」という項目を追加した。詳しくは次項で述べたいと考える。クチコミ促進要因としては「親切心」、「相互理解」が最も多く検出され、「同調性」と三つを合わせた「つながり」(正の方向)の項目においては、圧倒的な数値となっている。同時にクチコミ抑制要因に関しても、「つながり」(負の方向)が、そして信頼性を高めるという要素においても「つながり」(正の方向)が最も各項目において頻出な要素であることがわかり、クチコミにおける「つながり」の重要性を確認することができた。また、信頼性に関する「ノイズ」「懐疑的態度」の項目においては有効な回答を得られなかったため、クチコミの信頼性におけるこの二つの要素の影響を検証することができなかった。